「教育実習と重なったら…」全国で進む教員採用試験前倒し、学生に広がる不安 「5月実施」への対応は「簡単ではない」 大学側も困惑
全国で教員採用試験の実施時期を前倒しする動きが広がる中、教員を志望する長野県内の大学生たちが不安を募らせている。多くの学生が大学4年の春から夏に受ける教育実習の日程が、採用試験と重なる可能性があるからだ。教員養成を担う大学側は学生の負担が増すと懸念し、実習時期や教職課程の見直しなどの検討を余儀なくされている。 【表】24年度の教員採用試験日程一覧、関東・中部の都県分
「教育実習と日程が重なったらどうしよう…」。長野大(上田市)社会福祉学部3年の赤池来菜(らな)さん(20)は、来年度に受験を予定する教員採用試験の時期を気にかけ、心配そうな表情を浮かべた。
教育実習前に採用試験…学生懸念
赤池さんは来年度、5月に地元の富山県内の小学校、9月に中学校、11~12月に特別支援学校で教育実習を受けることが決まっている。ただ、文部科学省は採用試験を本年度の標準日(6月16日)より1カ月ほど早い5月11日を目安とするよう、全国の教育委員会に要請しており、日程が重なる可能性が出てきた。 富山県は例年、採用試験の日程をその年の2月ごろに発表するが、赤池さんは「もっと早く公表してくれれば予定が立てやすいのに」と不安をのぞかせる。 同大3年の小川真央(まひろ)さん(20)は、採用試験を教育実習前に受けることになるのでは―と懸念する。実習を通じて子どもたちと触れ合い、教員のやりがいを実感した上で試験の面接に臨みたいとし、「経験したことを自分の言葉で表現する方が(面接で)伝わりやすい」と考える。
前倒しは民間採用への対抗策
教員のなり手不足が深刻化する中、採用試験の前倒しは本年度から全国で顕著になった。6月1日の解禁が形骸化して早期選考が進む民間採用への対抗策として広がりを見せる。ただ、長野県教委を含め、学生らの負担などに配慮して本年度の前倒しを見送ったケースも一定数あり、教育実習に臨む学生や大学関係者が困惑しているのが実情だ。
「学生のモチベーションに大きく影響」
長野大では、学生が4年次に小中学校と特別支援学校で計3回の教育実習を受けるのが通例。社会福祉学部の片岡通有(みちあり)教授(教育学)は、文科省が打ち出した教員採用試験の5月実施について「学生の心情や大学側の事情を考えていない」と訴える。 片岡教授によると、本年度の実施を5月に前倒しした静岡県の採用試験を受けた4年生は、教育実習中の今月中旬に1次試験の合格発表があった。こうした状況は「学生のモチベーションに大きく影響する」と懸念する。