いじめられ『世界に一つだけの花』を聞き涙した少年時代。當間ローズが語る“バチェロレッテ”のその後
2つの仕事をかけもちして働く母を癒したブラジルの音楽
――そんなふうに聴いたことがありませんでした……。 ローズ 当時はまだ子どもだったので、「いじめられるのは、自分がダメなんだ」とマイナス方向に考えがちだったんです。でも、心の底では、自分を愛して大事に育ててくれた両親を悲しませたくない、心配させたくないという気持ちがあったので、「自分が悲しんだり落ち込んだりしては、両親もハッピーにはなれない」と考え、どんなことがあっても自分はハッピーでいようと思うようになりました。 それに、テレビで見ていたSMAPさんはとにかく楽しそうでかっこよくて魅力的でした。こんなふうに自分がもしテレビで活動することができたら、友達もたくさんできるのではないか。そして何より自分自身がハッピーでキラキラ輝いて生きられそうだと思い、芸能界に入ってグループで活動したいと夢を描くようになりました。 ――歌は、もともとお好きだったのですか? ローズ はい、大好きでした。ブラジルでは、祖父母が毎週末、自宅に近所の人を招いて、1週間の疲れをねぎらうため歌ったり踊ったりしていました。貧しい地域だったので、忙しく働く人が多く、僕の母も平日は週末を楽しみに、仕事を二つかけもちで働いていました。だから、歌がいつも生活のなかにある家庭だったんです。 日本に来てからは、僕が寂しくないようにと、祖父が作って送ってくれた沖縄民謡やいろんな日本の歌の入ったCDを毎晩聴いていたので、歌は僕の心の支えにもなっていました。
「空から鉄のパンが降ってくる」と訳詞した
――8月には、韓国アーティスト、Kennyのために作られた楽曲「涙~世界のどこかで瞬間(いま)~」を日本語とポルトガル語でリバイバルカバーされました。この曲を最初に聴いた時はどのように思われましたか? ローズ 今こそ届けるべき歌だと感じました。 歌詞の中にもありますが、今も世界のどこかでは、戦争で涙を流している人たちがいます。 直接的に何かできることはないかもしれませんが、歌を通してみんなで思い続けることはできると思いましたし、一緒に祈ることで、もしかしたら誰かの平和が早く訪れるかもしれない。そんな願いを込めて歌いたいと思いました。 ――心に響く、素敵なバラードですね。 ローズ ありがとうございます。言葉の本来の意味を考え、「自分らしく歌う」というよりは、歌で戦いの中にいる人たちに寄り添いたい、歌の力で少しでも平和の尊さを伝えられたらという想いが大きかったので、張り上げたくなる気持ちを抑えながら、優しさで包み込むイメージで、祈るように歌いました。 ――今回は日本語版とポルトガル語版とを同時にリリースされています。ポルトガル語版はローズさんが訳詞も手がけたのですよね。 ローズ はい。ポルトガル語は単純に日本語版よりも言葉がたくさん入るので、伝えられる余白が増えます。だから、作詞家の方が言いたかったであろうことに自分の想いを上乗せして、訳詞を作り上げました。 具体的には、ポルトガル語版には、「空から鉄のパンが降ってくる」というような、日本語にはない比喩的な表現を入れました。パンは通常なら大切な日々の食事ですが、それが鉄に見える。つまり生を与えてくれるものではなく、逆に生を奪うものになる、という比喩的表現です。 また、日本語で「赤く染まる」という歌詞には「赤ワインの色に染める」という言葉を当てたりするなど、随所で比喩的に苦しみを表現しました。 ――訳詞は初めて挑戦されたのですか? ローズ いいえ。僕はこれまでも、自分のライブでポルトガルの歌を日本語に訳して歌ったり、その逆もやったりしてきたので、訳詞をすることはそんなに大変ではありませんでした。ただ、ライブはその場限りですが、今回はCDになって残ります。そこはかなり意識しました。 ポルトガル語の歌詞を書くときは、いつも母が僕の書いた言葉をチェックしてくれるので、今回も書き上げた時点で母に送ったのですが、「めちゃくちゃ素敵じゃない」と褒められました。母は歌を聴いて泣いてくれたので、よし、と思いました(笑)。