欧州、トランプ政権復活で安保強化誓うも温度差 仏「米依存脱却を」北欧「米国は最重要」
【ブダペスト=三井美奈】米国でトランプ政権の復活が決まり、欧州連合(EU)と近隣諸国は7日、ブダペストで開いた「欧州政治共同体(EPC)」首脳会合で欧州安全保障の強化を打ち出した。一方で、米依存脱却を目指す西欧と米国を頼みとする北欧の温度差も浮き彫りになった。英独仏の欧州3大国が内政に足をとられ、指導力を発揮できないことも不安を増幅している。 フランスのマクロン大統領は会合で「われわれは、ずっと米国に安全保障を依存できない」と発言。トランプ氏の大統領就任を前に、かねてからの持論である欧州独自安保の構築に意欲を見せた。「欧州は草食動物ばかり。これでは肉食動物の食い物にされる」とも述べ、米中やロシアに対抗できる「強い欧州」を目指すべきだと訴えた。 ベルギーのデクロー首相もマクロン氏に同調し、「安全保障を米国に『外注』していてはいけない」と述べた。ロシアの侵略を受けるウクライナ支援も、欧州が半分以上を担うようになったと強調し、「米国不在ではダメになるというわけではない」とした。 これに対し、ラトビアのシリニャ首相は「米国は主要パートナーであり、今後もそうだ」と強調。そのうえで「わが国の防衛費は国内総生産(GDP)の3%以上。ほかの国も同様にしてほしい」と呼びかけた。仏独の防衛費は今年、北大西洋条約機構(NATO)基準値の「GDP比2%」に達したばかり。ベルギーは1・3%にとどまっており、自助努力を促した形だ。デンマークのフレデリクセン首相も「トランプ氏が欧州にさらなる努力が必要と言うなら、私は完全に同意する。米欧同盟はわれわれには最も重要だ」と述べた。 NATOのルッテ事務総長は、北朝鮮がロシア支援の見返りにロシアから軍事技術を供与されているとして、「中露、北朝鮮の連携は、米国と欧州、さらに日本にとっても脅威になる」と主張した。米欧同盟の意義は欧州安保にとどまらないと指摘することで、米国の欧州離れを牽制(けんせい)した。 7日はEPC首脳会合に続いて、EUの非公式首脳会合が開かれた。トランプ氏が関税引き上げを公約する中、EU競争力の強化を目指す投資計画が議題になった。だが、EU一の経済大国ドイツは6日にショルツ連立政権が崩壊し、政局混迷のさなか。マクロン大統領は少数内閣による苦しい政権運営を迫られ、EUを率いる独仏2大国は連携が取れていない。英国のスターマー政権も支持率が低迷し、欧州外交で存在感を発揮できずにいる。