海外で飛躍する即席麺 東洋水産「MARUCHAN」 メキシコで袋麺が伸長 物価高で価格優位性強み
東洋水産の海外即席麺事業が今期も二ケタ増で推移している。「MARUCHAN」ブランドを展開し北中米でトップシェアを快走するが、インフレ下で節約志向の受け皿となり、底堅い需要が続く。なかでもメキシコでは袋麺市場の開拓が進み、過去数年で販売食数は約3倍に拡大した。 各国における同社即席麺の市場シェアは、米国は年間51億食のうち6割以上、メキシコは年間15.5億食のうち約8割とみられる。袋麺の「Ramen」、カップ麺の「Instant Lunch」などを主力品に、圧倒的なポジションを確立している。 メキシコではカップ麺を中心に展開するが、近年は袋麺の伸びが目立つ。同社は「カップ麺が堅調に推移する中で、物価高を背景に袋麺の存在感が高まっている」とし、「袋麺は過去5~6年の平均成長率が約20%増と高水準で推移。23年度には食数の販売構成比が初めて20%を超えた」とする。
袋麺について「数年前からテレビCMの放映や試食販売を実施するなど育成してきたが、インフレの進行で1食当たりの割安感が改めて注目された格好。店頭では1食10ペソ以下で販売されることが多く、乾燥パスタ(約11.3ペソ)やタコス(約25.0ペソ)と比較しても価格優位性がある」と説明。プロモーションとしては、アレンジ料理を好むメキシコ人に向け、インフルエンサーを起用したレシピ提案を店頭やWEBサイトなどで積極的に訴求している。 カップ麺は、24年1月より既存の発泡カップから紙カップへの切り替えを開始した。現地政府が環境対策でプラスチック使用量の削減を推進しており、順次切り替えていく。これに伴うコスト増を踏まえ、同年4月に価格改定を実施したが、現在も安定した売れ行きをキープ。販売数量のさらなる拡大と値上げ後の価格維持を目指す。 アメリカの市場については「米国の人口約3億3000万人のうちインスタントラーメンの主な需要は一定層に支えられている。食費を節約したい学生のニーズも根強く、新学期セールにも大きく展開される」(同社)とコメント。最近の販促策では、コロナ禍の収束により大学キャンパスでのサンプリングを再開し、新たにプロサッカーリーグの試合会場でもサンプリングを行った。 今後は「高価格帯商品の強化でユーザー層を広げていきたい。現状はどんぶり容器の『BOWL』シリーズ、焼そばタイプの『Yakisoba』、日本から輸出するノンフライ袋麺『GOLD』に加え、日本で人気のワンタンを具材にした『WONTON RAMEN』シリーズも発売した」。 一方、カリフォルニア工場で拡張している増産設備が25年から稼働する。今後数年で段階的に能力を引き上げ、現状(4工場体制)に比べ約20%の増強を目指す。今回は既存工場と同じ敷地内で増産することもポイント。熟練したスタッフの製造ノウハウを伝承し、スピード感を持って立ち上げていきたい考えだ。