独裁に良いことは一つもないのか 世界人口の7割が権威主義的な国に住む現実 日本が陥る可能性も「民主主義に永遠はない」
権威主義に良いことは本当に一つもないのか
――あえてお聞きします。「民主主義」と「権威主義」のどちらが良いのでしょうか 権威主義、特にその中の一つの体制である独裁国家には何の利点もありません。 一人または少数の人々やその人たちが属する政党、または宗教団体がすべてを決定します。そして、自分の裁量であなたを投獄したり、拷問したり、殺害したり、あなたのお金を奪ったり、家を取り上げたりします。 ――強権的な政治のもとでは経済発展がしやすいとも言われます 中国やシンガポール、それに1960年代から1980年代初めの韓国を見て、強権的な政治の方が経済をうまく発展させることができると言う人がいるかもしれません。でも、世界のさまざまな例や歴史を見れば、それが正しいとは言えません。中国の過去20~30年や、同じころの韓国、そしてそれより前の台湾のような例は、とても稀なケースです。 通常は、独裁的な政治のもとでは、(治安の悪化や大統領選挙で不正があった)コンゴ民主共和国のような状況に陥る可能性がはるかに高いんです。あるいは、カンボジアのようになる。これらが典型的な例です。 したがって、独裁的な指導者のもとで経済が発展したり、人々の生活が良くなったりするのは、ほんの一部の例に過ぎません。多くの場合、そうはならず、全体的に見れば、民主主義の方が経済を成長させたり、人々の生活を良くしたりするのに、優れているということが分かっています。 ――では、民主主義は? 自由民主主義は、私たち個人の日常生活に多くの利点をもたらします。 表現の自由、拷問からの解放、政治指導者を選ぶ自由、デモを行う自由など、大切な自由を提供します。 医療システムの提供、乳幼児死亡率の低下、疾病との闘いはもちろん、道路整備や、電力供給など、私たちの日常生活を支えるインフラの整備、ワクチン接種など、あらゆる面で権威主義体制の国よりも優れています。
「どの国も、永遠に民主主義が続く」と安心はできない
――日本が権威主義に陥る可能性はあると思いますか 今のところ、日本が民主主義から外れそうな兆しはありません。でも、権力を一部の人だけが握る権威主義の危険から完全に守られているわけではないと思います。将来、日本が権威主義に陥る可能性はあります。 たとえば、インドは1945年からほぼずっと民主的な国でしたが、最近はその力が弱まってきています。どんな国でも「永遠に民主主義が続く」と安心するわけにはいきません。民主主義は、時代が変わるごとに活性化され、新しい世代が進めていかなければならないものなのです。 (取材・構成:テレビ朝日デジタルニュース部 今村優莉、石川瑞樹) V-Dem研究所 スウェーデン・イエーテボリ大学に本部を置く研究機関。世界200以上の国と地域を対象に1789年以降の民主主義に関するデータ集を作成、無償で公開。4,200人以上の専門家が参加して作る世界最大級のデータは各国の政治的自由や市民の権利の状態を評価することに重点を置く
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