【FF14】『黄金のレガシー』サントラ『DAWNTRAIL』発売記念インタビュー。エリアごとの楽曲制作秘話、『FF9』の楽曲に込められたシナリオ班の想いなどを直撃。効果音は『暁月』の1.8倍の作業量に!
オンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)の最新拡張パッケージ『黄金のレガシー』のサウンドトラック『DAWNTRAIL: FINAL FANTASY XIV Original Soundtrack』が、2024年10月30日に発売となった。 【記事の画像(30枚)を見る】 サントラには、『黄金のレガシー』のメインストーリーを彩った楽曲のほか、最新レイド“至天の座アルカディア:ライトヘビー級”の楽曲など、全66曲を収録。これまでのサントラと同様に、ハイレゾの高音質で楽曲を堪能できる、映像つきのBlu-ray Disc Musicとなっている。 今回は、その最新サントラの発売を記念して、『黄金のレガシー』の楽曲制作を担当した『FF14』サウンドチームにインタビューを実施。サウンドディレクター・コンポーザーの祖堅正慶氏をはじめ、コンポーザーの今村貴文氏、石川大樹氏、そしてメディア初登場となる矢崎早彩氏の4名に、それぞれの楽曲に込められた思いや秘話、ゲーム中に使用された『FF9』の楽曲に対するシナリオ班の想いなど、約2万5千字にわたってさまざまなお話をうかがった。 なお、インタビューでは物語の核心にこそ触れていないものの、『黄金のレガシー』のネタバレを含んだ内容となっている。まだエンディングまでプレイしていない人は、ストーリーをクリアー後に読み進めてほしい。 祖堅正慶(そけん まさよし): 『FFXIV』サウンドディレクター・コンポーザー。文中は祖堅 今村貴文(いまむら たかふみ): 『FFXIV』コンポーザー。文中は今村 石川大樹(いしかわ だいき): 『FFXIV』コンポーザー。文中は石川 矢崎早彩(やさき さや): 『FFXIV』コンポーザー。文中は矢崎 新しい風を吹かせるために、楽曲にもバラエティーさを ――まずは、今回がメディア初登場になる矢崎さんにお話をうかがいたいと思います。自己紹介も兼ねて、簡単な来歴をお聞かせください。当初から音楽関連のお仕事をされていたのでしょうか?: 矢崎: いえ、高校を卒業した後は、しばらく地元の小さい会社でCADオペレーターをしていました。 ――最初は音楽とまったく関係ないお仕事をされていたのですね。 矢崎: その会社で働いているときに『FF14』に出会って、ドハマりしたんです(笑)。さらに、もともと趣味で軽く音楽をやっていたこともあって、プレイしているうちに「『FF14』の音楽を作ってみたいな」という思いがわき上がってきまして……。せっかくだからチャレンジしてみようと上京して、昼間は引き続きCADオペレーターの仕事をしながら、夜に音楽系の専門学校に通っていました。そして専門学校を卒業した後に、スクウェア・エニックスの求人に応募して、採用されたというのが経緯になります。 ――それはどのぐらい前の時期になるのでしょうか?: 矢崎: 上京したのはいまから5年以上前ぐらいですね。 ――面接は祖堅さんが担当されたとのことですが、入社の決め手は何だったのでしょうか? 祖堅: 面接ではスキルと人間性をもっとも重視しました。というのも、サウンドはなかなかたいへんなセクションなので、耐えられるメンタルを持っているかが重要で……(笑)。あとは中途採用だったこともあり、純粋に即戦力として動いてもらえるかどうかを重視したと思います。 さらに、『FF14』は10年以上運営しているタイトルで、ゼロからゲームを始めると覚えることがかなり多くて、最新のストーリーまで進めるとなるとどうしても時間がかかってしまいます。その点で、矢崎は“もともとプレイヤーである”というアドバンテージがあり、そこも加点する要素でしたね。 そんなことを言うと、つぎからサウンドチームに応募してくる方は「『FF14』を事前にプレイしておかないと!」といった感じになってしまうかもしれませんが、必ずしもそんなことはありません(笑)。 ――ただ、10年以上の歩みのある『FF14』については、プレイしているかどうかは重要なポイントかもしれませんね。 祖堅: たしかに、いま『FF14』チームに入るなら重要かもしれないですね。どういう流れを経てここにたどり着いたのかということを、知っているのと知らないのとでは大きく違いますから。 ――矢崎さんが最初に手掛けられた曲は何だったのでしょうか? 矢崎: 最初に作ったのは『ヒッポライダーズ』という、アルカソーダラ族の友好部族クエストの曲になります。まずは課題という形で、どのような場面で流れる曲か知らされずに作ることになったのですが、私自身がヒカセン(光の戦士=プレイヤー)のため、お題の内容から「これは絶対につぎの友好部族クエストの曲だな」とピンときて、「うまくいったら採用されるかもしれない!」とこっそりと思いながら作っていきました。 ――今村さんや石川さんのときにも出された課題ですね。: 矢崎: その後もいろいろと曲を振っていただいて、“ミソロジー・オブ・エオルゼア”シリーズの“輝ける神域 アグライア”の道中で流れる曲なども制作しました。あとは『FF16』も、何曲か担当しています。 祖堅: 何曲かというより、『FF16』の本編は、矢崎が作ったものがかなり採用されています。DLCでも何曲が担当してもらいました。 ――入社されてから早くも、かなりの量のお仕事を担当されている気が……。 祖堅: 普通にやっていますね(笑)。 矢崎: 最初は「ある程度仕事に慣れてから曲を作らせてもらえるのかな?」と思っていたのですが、わりとすぐに現場へ、という印象でしたね(笑)。でもすごく光栄でした。 祖堅: ちなみに先ほどの話に出た課題については、今村や石川のときと同じで、何も言わずに「とりあえずこれ作ってみて」と渡したのですが、それによって “どこまでできるのか”、“どれぐらいの期間で作れるのか”など、かなり多くの情報が得られるんですよ。実際にこの課題によって、「矢崎はわりとやれる」ということがわかったので、「よしこき使ってやろう」と(笑)。それから2年半ぐらい修行の日々を経て、今日に至るという感じです。あちこちで仕事をした結果、すごく成長しましたね。 初めて各フィールドを若いコンポーザーに一任 ――ではここからは『黄金のレガシー』の楽曲についておうかがいしていきます。まず『黄金のレガシー』の楽曲制作にあたっての全体的なコンセプトをお聞かせください。: 祖堅: 根本のコンセプトとしては「バラエティーに富んだ内容にしよう」というものがありました。ですからサウンドの布陣としても、せっかくチームのみんなが成長してきているのだから、今回はさまざまなフィールドとそこにあるコンテンツを丸ごと彼らに一任してみようと。まさに「若者たちにがんばってもらって、その個性感からバラエティーさを出そう」という感じですね(笑)。 あとは『新生エオルゼア』から続く大きな流れがいったん『暁月のフィナーレ』で終結したのも大きく、「ここから先は新しい風を吹かせたいな」と思って、若い力をメインに全体像を仕上げていきました。 ――事前に楽曲リストを拝見させていただきましたが、まさにフィールドごとに個別の方が担当されていますね。各フィールドの音のイメージごと担当者に作ってもらおうという意図があって、そのような形にされたのでしょうか? 祖堅: “開発の過程で結果的にそうなった”という部分も多いのですが、基本的には、フィールドごとにひとり担当者を立てて、誰がつぎのダンジョンでその音を広げていくかを取捨選択しながら作っていった感じですね。 ――楽曲の制作が本格的に始まったのはいつごろだったのでしょうか? 祖堅: 毎回、拡張パッケージの最初の発表時点でショートのティザートレーラーが公開されるのですが、そのトレーラーのための曲作りを最初とすると、発売の1年ぐらい前にスタートしています。ただ本格的にゲーム内の楽曲を制作し始めたのは、年が明けて2024年になってからだったと思います。 ――そのころにはバックグラウンド(背景や景観)やゲーム中の画作りは固まっていたのでしょうか?: 祖堅: いえ、同時進行でした。これまでの拡張では実機映像を見ながら作っていけたのですが、今回はグラフィックスアップデートもあって、実機で確認できるタイミングがいつもより遅かったのです。とにかくデザイナー陣がもう超繁忙期で、その状況で「早く見せてよ」とは言いづらくて……。遠慮がちに「……見ていいスか?」みたいな感じでした(苦笑)。 ――ちなみに“バラエティーに富んだ内容に”というのはシナリオ班からのオーダーでもあったのでしょうか。 祖堅: そうですね。シナリオ班からの発注段階で「いろいろな文化が入り混じっている大陸」というコンセプトがありました。だからこそ、僕ひとりがやるよりも何人かで分担して曲を作っていったほうが、その雰囲気が出るだろうなと。もともと以前からそのやりかたをやってみたかったので、今回は発注内容とやってみたいことが合致した感じですね。 ――今村さんや石川さん、矢崎さんは、祖堅さんのその意向を聞いたときに、どのように思われましたか? 石川: 祖堅さんがそう言うなら「やるしかない」と思い、突っ込んでいった感じですね。 今村: やっている側は必死だったので、全然覚えてないんですよね(笑)。 矢崎: うんうん(笑)。 今村: とにかく「振られたからにはやらないと! 間に合わせないと!」という気持ちが強かったですね。 祖堅: これまで討伐・討滅戦の曲などは、僕がある程度道筋を作ったものを渡してブラッシュアップしてもらうことがほとんどでした。でも“ペンペン草も生えていないゼロの状態から彼らに任せる”ということはあまりやってこなかったんですよ。ですが今回は、「こういうお題があって資料があるから、とりあえずやってみて」と言って任せてみました。結果、みんな期待に応えてくれたかなと思います。 ――実際にプレイしていても、すごくバラエティー豊かというか、曲の幅がいままでの拡張パッケージよりもすごく広がった印象を受けました。 祖堅: でも改めて考えると、いままでひとりでやっていたのがおかしいんですよ! 本当に。 今村: 僕らが見ても「これをどうやってひとりでやっていたんだろう」と思いますよ(笑)。 祖堅: 毎日泣いていたよ(笑)。 石川: 泣きたくなりますよね。 祖堅: それでもまだ人数が足りていないぐらいなんですけどね。とはいえ、今日この場にいないメンバーも何人かいて、彼らもすごく成長してきています。コンポーザー陣の層がかなり厚くなって、底力が出てきたなという印象ですね。なんだかおじいちゃんみたいなことを言っていますけど(笑)。 フィールドごとの楽曲に込められたそれぞれの想い ――ここからは個々の曲についてうかがっていきます。まず『Dawntrail』については、主題歌としては初めてTHE PRIMALSが楽曲制作を担当されています。これはどういう経緯でそうなったのでしょうか?: 祖堅: これはプランナーからのオーダーですね。“喜びの神域 エウプロシュネ”の『月満ちる夜』という曲をTHE PRIMALSでも演奏したのですが、「あんな感じに、元気いっぱいに歌っていて、メジャーキーで楽しげな雰囲気が感じられる曲に」というオーダーでした。さらに「みんないっしょに歌って盛り上がる感じがほしい」、「できればTHE PRIMALSで」と言われて、その流れで担当することになりました。結果的にはうまくまとまったのですが、なかなか難産でしたね。 ――ストレートで明るい曲調だったので、勝手に曲の制作もスムーズに進んだのではという印象がありましたが、そうではなかったんですね。: 祖堅: すごく苦労しましたね。この楽曲を作っているときにひとつわかったことがありまして……僕は明るい曲があまり得意じゃないみたいですよ(笑)。 一同 爆笑 祖堅: たぶん、どん底で「いまに見てろよ!」と奮起するような曲が得意で、「イエーイ!」みたいな曲はあまり得意じゃないなと、今回は思い知らされました。制作中もずっと地に足がついていないというか……。これまでにいっぱい明るい曲を聴いてきてはいるのですが、自分の経験を咀嚼して明るい曲を作ろうとすると、途端に出てこないなと(笑)。 ――そういった苦労もありながらも、最終的にはすごく気分が乗る曲になっているなと感じました。: 祖堅: これはTHE PRIMALSのみんなの演奏能力が大きかったと思います。 ――一方、エンディング曲の『Smile』は、ミュージカルのようにみんなで合唱して歌い上げるイメージの曲調でしたよね。 祖堅: これもプランナーからの指定で、こういう曲調でこういう内容に……というのを忠実に従った形ですね。これも言っていいのかわからないのですが……僕はミュージカル曲もめっちゃ苦手なんですよ(笑)。 一同 爆笑 ――オープニングの主題歌に続いて、エンディングも苦手なジャンルだったと(笑)。 祖堅: もちろん、ミュージカルやミュージカル楽曲というエンターテインメント自体はすごくすばらしいものです。ただ食事に好き嫌いがあるように、僕がたまたま苦手なジャンルという感じで……。それもあって『Smile』も難産でした。ちなみに制作前は「誰かやらない?」といった感じでみんなにも聞いてみたのですが、「それは祖堅さんがやらないと……」って返ってきて(苦笑)。 ――やはりオープニングとエンディングは、祖堅さんが手がけるべきだと。 祖堅: ですから「ぐぬぬぬ」って言いながら作っていました(笑)。とはいえ、しっかりしたものが作れたかと思います。『Smile』はbless 4のAKINOさんが歌唱してくださって、コーラスにも、大御所アーティストのコーラスに参加されている方々に、今回のために大集結していただいて、大人数でわーわー言いながら録らせていただきました。 ――まさに大団円を表現している曲だなと感じました。先ほどもお話がありましたが、今回の『黄金のレガシー』はバラエティー豊かで、その中でもとくに前半と後半でかなり物語やフィールドの雰囲気が変わる印象でした。そこはサウンド面でも意識されたのでしょうか? 石川: すでに発注段階で「前半と後半で音楽ジャンルを分けてほしい」という意図が伝わってきていたので、そこはしっかりとお題に応えたいなという想いが念頭にありました。僕も前半と後半でいろいろなジャンルの曲を作りましたが、制作ジャンルが違うと使う脳みそも変わってくるというか……。僕に限らずみんなもそうだったと思いますが、気持ちをうまく切り替えながら作っていきましたね。 今村: 発注段階の画を見たときに、途中からもう違うゲームのようになっていたので、何があったんだろうと(笑)。なおフィールドについては、まだ完成形ではなかったものの、ゲーム画面を確認し、ゲーム内の空気を感じながら作っていくことができました。 ――その流れで、フィールドごとのお話をおうかがいできれば。矢崎さんはオルコ・パチャとコザマル・カとをメインに楽曲を担当されていますが、どのようなことを意識されてこのふたつのエリアの楽曲を作っていきましたか? 矢崎: 発注書に、「実在する国のこういう音楽に近いものに」といったイメージが書かれていて。そのあと実際に画を見て、自分が感じたものを取り入れて作っていきました。 中でもオルコ・パチャは、気持ちのいい風が吹いている感じのイメージで、『黄金のレガシー』で「新しい地に来た!」と感じられる、冒険感のあるような曲を目指しました。 一方のコザマル・カは、ちょっと苦労した記憶がありまして……。コザマル・カでは曲中に「びよーん、びよーん」という楽器の音が入っていると思うのですが、発注の段階であの楽器を使ってほしそうなオーダーがあったのです。 ――「こういう音色の楽器を使って欲しい」という具体的な発注もあるんですね。 祖堅: ありますね。 矢崎: あれは“口琴”という楽器で、けっこうクセが強いんですよ。しかも私の中のイメージでは、コミカルな曲に使われてる音色という印象がすごく強かったので、それを使ってフィールド音楽として作りあげるにはどうしたらいいんだろうと、最初はすごく悩みました。 それに加えて、そこに住んでいるハヌハヌ族、モブリン族が踊っているイメージと、ジャングル的な要素も入れたいなと。この後に出てくるヤクテル樹海もジャングルなので、そことのすみ分けを意識しつつ、発注の内容とそのフィールドに住んでいる部族たちの雰囲気、ジャングルの感じを融合させて作っていきました。 ――まさに多彩な要素を考慮して作られたのですね。 矢崎: じつは、コザマル・カのフィールド楽曲は、1回ボツになったんです。そのときは、自分でもあまり納得がいかないデキで、祖堅さんにダメと言われたときは、「このままいかなくてよかった」と心のどこかで安心した記憶があります。作り直した現在のバージョンは、コザマル・カを歩いたときに「すごく合っているな」と感じられて、満足しています。 祖堅: 矢崎はこう言っていますけれど、彼女がアルカソーダラ族の曲を作ったときに、俺の耳にはすでに「びよーんびよーん」って音が幻聴で聴こえていたので(笑)、やれるだろうと思っていました。 ――モチーフ的には南米的なイメージがあると思いますが、オルコ・パチャとコザマル・カとでは、南米の高地と低地ぐらいイメージが違う感じですよね。 矢崎: イメージはまさにおっしゃったとおりで、ふたつのフィールドで雰囲気をガラッと変えるのはかなり意識しました。 ――つぎのエリアはヤクテル樹海ですが、これは石川さんが担当されているのですね。 石川: ヤクテル樹海の曲はベンチマークが初出だったのですが、そこから尺を伸ばしてインゲーム用に整えた形になります。もともと祖堅さんからは「ヤクテル樹海はオーケストラ調でいきたい」という要望があり、僕が担当することになりました。ゲームをプレイされた方はわかると思いますが、ヤクテル樹海は湿気が多そうな生い茂った森で、そういった部分を意識しながら楽曲を作っていったのですが、いかんせん普通のオーケストラ曲にするとゲームとしておもしろくないですし、あまり合わなかったので苦労しましたね。 さらに『漆黒のヴィランズ』ではラケティカ大森林の曲を偉大な上司(祖堅さん)が手がけているので、あのイメージと差別化しつつ、いかにゲームにぴったりな樹海の曲を作るかが個人的なテーマでした。最終的にはラケティカ大森林の曲を踏襲してボーカルを入れたり、祖堅さんとブラッシュアップしたりして、ゲームに合う形へ落とし込めたかなと思います。 ――確かに初めて聴いたときに、ラケティカ大森林とは違う曲であるものの、どこか通ずるものがあるなと感じました。: 石川: どうしてもあのイメージが頭の中から離れないんですよね(笑)。 ――夜はまたガラリと曲調が変わりますよね。 石川: 夜は昼のメロディーをもとに、Keiko(※)さんにアレンジしていただきました。Keikoさんには昼のオーケストラと夜のピアノの対比をうまくまとめていただけたなと。 ※Keiko(大嵜慶子):ピアニスト、アレンジャー。さまざまなライブでのピアノ演奏や、テレビ番組・アニメなどの楽曲制作、編曲を手掛ける。『FF14』では公式アレンジアルバムへの参加のほか、ファンフェスティバルなどの多数のイベントでピアノ演奏を披露。 ――続いて今村さんが手掛けられたシャーローニ荒野についてですが、こちらはヤクテル樹海までと比べて雰囲気がガラリと変わりますね。 今村: 物語の前半と後半が切り替わる、ちょうど中間にあたるぐらいのフィールドですね。シャーローニ荒野は、「ふたりの男が荒野を歩いているシーンで、そのバックに流れている曲をお願いします」という発注がありまして、「男くさい感じにまとめてください」とオーダーされていました。それに対してどうしたものかと悩んだ結果、まず参考資料として用意されていた映画の画像を制作時のモニターの上のほうに置いて、その横に西部劇のガンマンがいる写真を置いて……と、形から入ることにしました。 ――そのビジュアルを見ながら作られたんですね。 今村: さらにもうひとつモニターがあって、そこにゲーム画面を映しながら作りました。ちなみにこの曲は開発の後期に作ったので、僕のヒゲもすごく生えていて……(笑)。モニター画面にはイメージする写真を置いて、自分はボーボーのヒゲでギターを持ってと、まさに曲にぴったりな環境ができあがっていたので、かなり早く作れました(笑)。 ――まさに西部劇的なイメージです(笑)。 今村: ただ、できあがったメロディーが渋すぎて、祖堅さんからシナリオ班に「これで大丈夫か」と確認してもらったのを覚えています。メロディーがすごくシンプルだったので、『FF14』の楽曲として使えるかどうかのギリギリのラインでした。 祖堅: 夜バージョンの楽曲もありますし、その後のダンジョンでもアレンジとして使用しますから、そういった面でギリギリのシンプルさでしたね(笑)。 ――シャーローニ荒野の夜の曲もKeikoさんがアレンジを担当されていますが、今回はいままで以上にKeikoさんが編曲に関わられているのですね。 祖堅: 一部を除いて、夜の楽曲は基本的にKeikoさんにアレンジをおまかせしています。ちなみにこれまでは、たいていピアノ1台で演奏する曲が多かったのですが、今回は1台だとやりきれない曲が多かったので、ピアノを同時に3~4台使って曲を仕上げても問題ない想定で発注し、ピアノアレンジしていただき、僕の手もとで編集して最終的に完成させました。ですから『暗き雷雲 ~ヘリテージファウンド:夜~』などは、ピアノながらシンセっぽくも聴こえるといった、チャレンジングなピアノアレンジをしています。 ――確かにいままでとアレンジの毛色が違うというか。 祖堅: いままでは芸術的に弾くようなアレンジが多かったのですが、今回はバラエティーというお題があったので、あえてチャレンジングなピアノアレンジにしています。ほかにも『硝煙に緑陰 ~シャーローニ荒野:夜~』だったら、いただいたデータからわざとチューニングをずらしたりしています。 ――なんと! 祖堅: 荒野のピアノって、グランドピアノじゃなくて、アップライトピアノで、鍵盤があちこちへこんでいるイメージがあるじゃないですか。だからアップライトピアノ独特の音で、かつ少し調子が狂っている感じの音色にしてみたり。そういったように、今回は夜の曲のアレンジの方向性として、あまりやったことないことをたくさんやっていますね。 ――そして、先ほども話題に挙がったKeikoさんアレンジの『暗き雷雲 ~ヘリテージファウンド:夜~』は、いままでのピアノ曲とは違う、すごく強烈な印象を感じました。 祖堅: あの曲は、ピアノはピアノでも音源を7個ぐらい使って表現しています。ちなみに昨今のピアノの音源にはいろいろな機能がついていて、中にはピアノの音の後に、勝手に音の尾ひれがつくような機能もあったりします。 ――音のエフェクトが勝手についてくるみたいなイメージでしょうか? 祖堅: そんな感じですね。ただお店で試奏するときは、そういう機能があると「へー!」と興味がわいて買うのですが、結局現場では使いどころがないことが多いです(笑)。今回はそれがたまたま活きましたね。ですからあの曲のエフェクトは、最新の機能を駆使して作ったというわけです。 ――では最後のフィールドであり、祖堅さんが手掛けられたリビング・メモリーの楽曲についてもお聞かせください。: 祖堅: コンポーザーには、それぞれに得意なジャンルというか、「こういう曲を作らせたらうまいよね」という個性があります。だからオルコ・パチャとコザマル・カは矢崎、ヤクテル樹海は石川、シャーローニ荒野は今村というように割り振っていったのですが、このリビング・メモリーについては悩みました。気づけばみんなほかのフィールドを担当しているし、「じゃあ俺がやるか」となった感じです。 リビング・メモリーはもともと“シャットダウンの街”というコンセプトで、ストーリー上で数々のお別れのシーンがあるじゃないですか。ですからサビは、ちょっと抜けるような、さみしいけれど優しく、気持ちのいい独特な雰囲気にしたかったのですが、なかなかできなくて……。悩む日々が続く中、仲がよかった知り合いのお別れ会があったので行ってきたんです。家に帰ってきて悲しさに暮れているとサビがふっと浮かんできて、そこからスルスルスルッと曲を完成することができました。 ――亡き人を想う、郷愁の曲ですよね。 祖堅: お別れ会のときに天に昇られた知り合いの方が「しょうがないな、祖堅くん」と力を貸してくれたのだと思っています。 『FF9』の楽曲に込められたシナリオ班の想いとは ――つぎはプレイヤータウンの楽曲についてお聞きしていきます。まず印象的なのがトライヨラですが、ジャズ調の曲というのは発注段階でオーダーされていたんでしょうか?: 祖堅: はい、オーダーとしてありました。この曲も若者たちにまかせるか、自分で骨組みを作ろうかを悩みましたね。なぜかというと、「この曲は最後に楽器の収録をしないと収拾がつかなくなるかもしれないな」と思っていて、そうなると制作の後半戦でそこそこたいへんな作業になるのがわかっていたからです。でも最終的にトライヨラに関しては、矢崎と石川のふたりにまかせました。 ――昼の曲を矢崎さん、夜の曲を石川さんが担当されている形ですね。それぞれどのような部分を意識して曲を作られたのでしょうか? 矢崎: 正直、発注書を確認する前に画だけを見たときには、ジャズという発想はまったく出てきませんでした。どちらかといえばもっと民族音楽っぽい曲がハマるだろうなと思っていて、いざ蓋を開けてみたら「ビッグバンドジャズみたいな感じで」という発注があって、ビックリしました。 ――確かに第一印象だけだとジャズは思いつきづらいですよね。: 矢崎: シナリオ側の意図としては、まず多彩な民族が暮らす国家という設定がありますし、『黄金のレガシー』自体が“ヒカセンの夏休み”と言われていたので、「いままで過酷な運命を背負ってきたヒカセンがようやく開放されて、楽しい場所に来たぞ」ということを表現するためにも、ビッグバンドジャズという発注になったようです。 その話を聞いて「たしかに!」と納得して、いざ作り始めたのですが、ただ単純にビッグバンドの曲を作ったらいいかというと、そうではなく……。プレイヤータウンとして皆さんが長時間いる場所でもあるので、“ずっとそこにいても聴き疲れないこと”と、“いろいろな民族が暮らしていることのにぎやかさ”の両立が、すごく難しかった記憶があります。どの楽器でどのメロディーを弾かせたらマッチするのかを、画を見ながらひとつひとつ選んでいきました。 ――楽器が多くてにぎやかでありつつ、なおかつプレイヤータウンとしては落ち着く要素もなければいけない、というのは難しいですね……。 矢崎: ちなみに最初にできあがった曲は、前半のにぎやかな部分しかなかったのですが、そこも祖堅さんから「ずっとループすると疲れちゃう」という指摘をいただいて、後半にゆったりしたパートを加えました。そういったこともあって、かなり苦労した曲ではありますね。 祖堅: わりと時間がかかったよね。 矢崎: また、最初は楽器を録音する前提で作っていなくて、打ち込みのクオリティーでジャズっぽく聴かせないといけないのがすごく難しく……。でも結果的には実際の楽器で演奏していただいて、そのおかげもあってビッグバンドっぽさを出しつつ、プレイヤータウンとしてマッチした曲になったのではないかと思います。 ――夜の曲に関してはいかがでしょうか?: 石川: トライヨラの昼夜は同時進行で作っていて、昼と夜の対比をかなり気をつけないとなと思っていました。昼は発注書を見る限り「きっとにぎやかなものになるだろうな。」と思っていたので、それに対して夜は楽器の編成を絞って、夜っぽい感じを出せたらいいなと考えていました。 曲の中盤では、ひとりひとりがアドリブでソロを回していくという展開も用意しているのですが、これは夜の居酒屋で突然、楽器を持った人が乱入してきて、みんなで集まって演奏が始まる、といったイメージで作っています。 ――セッション的な感じですね。 石川: ちなみに僕も、最初は打ち込みだけでやり切ろうと思ってがんばっていたのですが、祖堅さんから「これは打ち込みじゃ厳しいね」と言われて生音になりました。 ――祖堅さんはどのような経緯で「生音でいこう」と判断されたのですか? 祖堅: まずそのお話をする前に、これはすごく大事なことなので先に言っておきますが、曲のクオリティーを上げるためには、もちろん楽器の生演奏を収録したほうがいいに決まっています。音楽だけを見たときはそれが正義なのですが、僕たちはゲーム制作者なので、「生楽器を入れることでどれだけゲーム体験としての付加価値を得られるか」ということを考えないといけません。 生演奏の音を収録するには、専用の譜面やパート譜を作る作業、レコーディングをするための専用のデータを作る作業、レコーディングに行ってその場でディレクションする時間など、本来やらなくてもいいかもしれない時間とタスクが大量に発生します。ですから「生演奏の収録にその時間とタスクを割くことで本当にゲーム体験が上がるのか」、「それともその時間を使ってもう1曲作ったほうがゲームにとっていいのか」などは、つねに気にしなくてはいけません。単体の音楽だけを見れば生演奏を入れるべきなのですが、そのやらなくてもいいかもしれない時間を使って、新たに別で新規の曲を作ることによってゲーム体験が向上するのであれば、そっちを取るべきなのです。 ――あくまでゲーム体験が豊かになるほうを選ぶべきだと。 祖堅: もちろん、曲数を増やすだけが正義でもありません。ほかにもデバッグとか、ゲームを作るための作業は限りなくありますから。ですから音楽を作るタスクも存在する中で、さらにそのレコーディングをするとなると、楽曲制作期間の中からも時間を割かなければいけませんし、その先に待っている“ゲームを作る作業”からも時間を持ってこなければいけない。 ですから今回はそれらを天秤にかけた状態でギリギリまで様子を見つつ「製品としてのクオリティーを出すために生音を入れた方がよい」というのが見えてきた段階で、生演奏の収録を行うように舵を切り直しました。 ――そうしてトライヨラの曲ができあがったんですね。 祖堅: あとは、リビング・メモリーのオーボエもこっそりその隙間で収録しています。「あ、これ録れるぞ」と。「楽譜を作るのに10分、録音するのに30分で、40分でいける!」って(笑)。 ――そんな裏話も(笑)。確かにあのオーボエの音は印象的でした。あともうひとつのプレイヤータウンとしてはソリューション・ナインがあり、楽曲を今村さんが担当されています。こちらはトライヨラと打って変わって、“チル”という印象をすごく強く感じました。 今村: この曲は、そもそも発注の段階で“ソリューション・ナイン”と書かれていたんですよ。僕は小さいころに『FF9』をプレイしているので、これは絶対に自分で手掛けたいなと思いました。 ――『FF9』への思い入れがあって手を挙げたのですね。 今村: 曲を誰に振るかという会議のときに、「やってもいいですか?」と突っ込み気味に立候補しました(笑)。画を見ても「僕が好きな音楽のタイプでいけそうだな」と思って担当させていただいたのですが、いざ蓋を開けてみたら発注内容が“昔のフュージョン曲”といったもので、僕がイメージしていたものと全然違ったんです。そこで発注とは異なりますが、祖堅さんに「好きに作っていいですか?」と相談して、好きにやらせてもらっていまの形に落ち着いた感じですね。 祖堅: でもシンセサイザーの音などは、発注内容に寄せて調整してもらったよね。 今村: はい。あとトライヨラがズンチャカしていたので、こっちは落ち着いた“チル”な感じで。ちょうど自分自身もチルしたかった時期だったので(笑)。 石川: 曲を作っていると、そういう場面ってありますよね(笑)。 ――ちなみに、いままでのお話でたびたびシナリオ班からの発注内容の話題が出ましたが、オーダーとしてはどれもハッキリした内容だったのでしょうか。 祖堅: すごく明確でした。ですから“何を作るか”というゴールはみんなと共有しやすかったですね。 ――先ほども今村さんのお話にありましたが、今回の『黄金のレガシー』は『FF9』の楽曲が多数使われているのもひとつの特徴だと思います。こちらに関しては、原曲を使われている部分とアレンジを使われている部分の両方がありますが、採用にあたってどのようなことを意識されたのでしょうか? 祖堅: これは僕らというよりも、シナリオ班の強い思いがあったからですね。 ――ではシナリオ班からの発注段階で、「この曲を使いたい」というオーダーが明確にあったのでしょうか。 祖堅: はい。「これを用意してください」という発注でした。ですので、今日お伝えする内容が間違ってはいけないと思って、昨日、代表して石川(シニアストーリーデザイナーの石川夏子氏)にシナリオ班の意図をまとめてもらい、コメントを預かってきました。では読み上げます。 「7.0においてはスフェーンや永久人関連など、かつてのアレクサンドリア王国の気配が強いところに『FF9』からの楽曲を原曲そのままで使わせていただいた一方、同じくアレクサンドリア王国に根幹を持ちつつも、いまを生きることにフォーカスしているオブリビオンのアジトでは「タンタラスのテーマ」のアレンジ版が流れています。両者の方向性の違いを演出するひとつの要素として活用させていただきました。」 以上がシナリオ班のコメントになります! ラスボス曲の制作時には真のラスボス・吉Pも登場!? ――つぎは討伐・討滅戦についてのお話をお聞きしていきます。まず『The Skyruin ~ヴァリガルマンダ討滅戦~』については矢崎さんが手掛けられていますが、これは祖堅さんが冒頭でおっしゃった新しいチャレンジの一環でしょうか?: 祖堅: そうです。依頼したときに「えー」と言っていましたけど、「うるさい、やれ!」って言って(笑)。 矢崎: 私もヒカセンであり、討伐・討滅戦の曲の重要さを知っていたので、その意味でも「私で大丈夫かな……」という感じでした。ただ、パッチ6.4でもゴルベーザ討滅戦の曲を担当しましたから、その経験を踏まえて今回もがんばろうという気持ちで取り組みました。 ――ゴルベーザ討滅戦はベースに『FF4』の楽曲がありましたが、今回はゼロからの制作になったかと思います。 矢崎: それでいうと、この曲はオルコ・パチャのメロディーと『Dawntrail』のメロディーを組み合わせて作っていますね。 ――そして『レゾンデートル ~ゾラージャ討滅戦~』は石川さんが、『ひとつの路 ~エターナルクイーン討滅戦~』は今村さんが手掛けられています。: 石川: 気がついたら祖堅さんからやってほしいと言われて……(笑)。“ゾラージャ討滅戦”の曲はもともと『FF14』にはあまりないジャンルの楽曲でした。なので制作時はゾラージャというキャラクターへの理解を深めながら作っていきました。ネタバレになるので細かい言及は避けますが、力に溺れる様子や、我を失う様子などの部分をニュアンスとして入れられたらいいなと思って作っています。 ちなみに“ゾラージャ討滅戦”の曲は2回しで1曲ぶんなのですが、祖堅さんと相談して、2回し目の頭にゾラージャの狂気を感じさせるような、ノイズがバキバキに入っている部分も用意しています。そういったところを調整して制作した結果、ゲームにマッチしたものを作ることができてよかったなと。 ――続いての“エターナルクイーン討滅戦”はいわゆるラスボス戦になりますが、いかがでしたか?: 今村: これはかなりしんどかったですね。僕がいちばん最後に作った曲なのですが、“締め切りを超えられない力”が発生するという……(笑)。 ――“超える力”ではなく、“超えられない力”なんですね(笑)。 今村: プライベートでも『FF14』をプレイしていて、ラスボス戦は特別なものだとわかっていたので、「これやばいな」とずっと思っていたんです。なんというか、“心を準備する”のにすごく時間がかかってしまって……。発注内容としては、「疾走感を感じさせる曲に」というものや、「リビング・メモリーのピアノを活かしてほしい」というものがありました。それを踏まえながら、激しい曲にしすぎず、かつ哀しさや切なさも入れながら、ピアノの切ない感じが活きるように意識して作りました。 ――確かにもとのメロディーもあって、疾走感と悲壮感が両方同居しているような感じですよね。 今村: そこはかなり意識しましたね。 石川: 祖堅さん、締め切りの日はすごくヒヤヒヤしていましたよね。 祖堅: もうあそこまできたら、「きっとできる」と信じるしかない。でも、曲名の『ひとつの路』のとおり、ひとつしか道がなかったよね。 ――ラスボス戦の後半に流れる『ふたりの路』は、また別アレンジとして祖堅さんが手掛けていますね。: 祖堅: これは発注段階で直接聞いてみたところ、「ウクラマトを“正義のヒーロー登場”にしたい」という明確なイメージが伝えられたので、それをもとに僕のほうで担当しました。単に『Dawntrail』のフレーズを入れると明るくなってしまうので、そのあたりも注意しつつシナリオ班からの意向に合わせて曲を整えていったのですが、最終的に吉P(プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏)が出てきてひっくり返ることに……(笑)。 矢崎: 真のラスボスですね(笑)。 祖堅: 本当にラスボスが出てきちゃったんだよね(笑)。しかも、その時点で締め切り日は過ぎているんですよ。具体的には、できあがった曲に悲壮感が漂うパートがあるのですが、それを入れるか入れないかを吉P含めて締め切り後に議論した感じですね。最終的には「ここまでだったらギリギリ作業できる」というのを話し合って、なんとかできあがりました。 アルカディアでの歓声にはヒカセンの歓声が使われている! ――ここまで主要な7.0の曲についてうかがってきましたが、今回のサントラに収録されている曲の中で、いちばん思い入れのある曲はなんでしょうか?: 石川: 僕は『生命の解体 ~魂魄工廠 オリジェニクス~』が、作るのはたいへんでしたけど、お気に入りですね。開発後半でいきなり担当することが決まったのですが、余力がない中で頼まれたということもあって、かなり焦った記憶があります。ただ発注内容としても「焦燥感がある曲に」というものだったので、いまの自分が置かれた立場や気持ちも含めて、リアルに焦燥感のある曲が作れたかなと(笑)。曲自体も2~3日で急いで作ったのですが、ゲーム的にも急いで進まないといけないダンジョンでもあったので、たまたまですが、その意味でもうまくハマりましたね。 ――矢崎さんはいかがでしょうか?: 矢崎: どれも思い入れがあって悩みますが、『樹海に沈む夢 ~遺産踏査 天深きセノーテ~』がお気に入りですね。今回の『黄金のレガシー』は、前半は新しい冒険という感じでありながら、後半はガラリと世界観が変わる作りになっています。その中でこの曲は、いわば前半のラストダンジョンのような位置づけを意識して作りました。 ――確かにそういうイメージのダンジョンですよね。: 矢崎: あとは、最初に入ったエリアといちばん最後のエリアで景色や印象がガラリと変わるダンジョンでもあったので、ちゃんと各々のエリアに曲をマッチさせるのが難しかったですが、のちほど自分自身が『黄金のレガシー』をプレイしたときに、思った以上にマッチしていて安心しました。 ちなみにこの曲や、“輝ける神域 アグライア”の道中、“喜びの神域 エウプロシュネ”の道中の曲にはちょっとしたボーカルが入っているのですが、打ち込みで再現するのが面倒だなと思ったので、自分で歌っています。 ――あれは矢崎さんご自身の声だったのですね。 矢崎: はい、音源で作るほうが時間かかるときは、すごく加工はしているものの、自分で歌っちゃっていますね。 ――今村さんはいかがでしょうか? 今村: 自分のお気に入りは、イベントシーンで流れる『お茶目な戯れ』という曲ですね。僕は6.xシリーズで“帰ってきたヒルディブランド”のエンディングテーマや、ジャズ調の『微笑む幽霊』という曲を担当しているのですが、コミカルな楽曲をどれぐらいバラエティー豊かに作れるのかに挑戦しているんです(笑)。今回の曲も自分の中で「このタイプもいけるな」と思える新しい一面が再確認できました。ちなみに“お茶目な戯れ”を祖堅さんに聴いてもらったときに、「某猫型ロボットの国民的アニメで流れていそうだね」と言われて、「たしかに」と思ったのが記憶に残っています。 ――この曲はいろいろなシーンで流れていて、すごく印象に残っています。: 今村: わりと流れる頻度が高めでしたね。 祖堅: あんまり出番がないかなと思っていたら意外とあったよね。 ――そして、祖堅さん的に印象に残っている曲はどれでしょうか? 祖堅: 楽曲リストを見ても、もうあんまり覚えてないんですよね……。というのも、コンサートやライブやイベントが多くて、今年(2024年)前半の記憶がほとんどなくなっているんですよ。 ――今年は本当に怒涛の展開でしたよね。 祖堅: 7.0の曲を作り終わった瞬間も、すぐに“Distant Worlds: music from FINAL FANTASY”(『FF』シリーズのオーケストラコンサート。祖堅氏もゲストとして参加)だった気がしますし、それが終わったら中国のファンフェスティバルの準備をしていた気がしますし、それが終わったらもう音楽フェスの“LuckyFes 2024”で、つぎは横浜アリーナのTHE PRIMALSの単独公演……。といったように忙しすぎたため、あまり覚えていないのです。そんな中で選ぶとしたら『Give It All ~至天の座アルカディア:ライトヘビー級~』でしょうか。 ――“至天の座アルカディア:ライトヘビー級4”の曲ですね。その流れでアルカディアの曲についても深掘りしていきたいと思います。まず今回は、層ごとに違った特徴があって、『黄金のレガシー』の全体のコンセプトであるバラエティー豊かさをまさに体現したレイドになっていますが、これはもともと今回のレイドの楽曲の方向性として考えていたことだったのでしょうか? 祖堅: 『暁月のフィナーレ』のレイドシリーズ“万魔殿パンデモニウム”のときは、『FF16』の楽曲も作りつつ、サウンドチームの人数もいまの半分以下で、まったく制作タスクを割けない状況が発生していました。当時はあれが限界、いや限界を突破していたのですが、やっぱりプレイヤーの方々から「この層とこの層は同じ曲か」という声をいただいていて、心にトゲが刺さっていたんです。制作する布陣も強化できたわけだから今回は早い段階で「今回のレイドは全層オリジナルで作るから遠慮なく発注してくれ」というのをプランナーチームに伝えていました。イメージが“プロレス会場”だということも知っていたので、個人的にもやらないわけにはいかないだろうという感じでしたね。 ――ある意味、選手のテーマ曲のようなものですからね。 祖堅: 「こっちも全力でプロレスをしてやる」ということで、全部オリジナルであることに加え、それぞれの曲を若者たちに振るときに、「この曲は“あなたたち”でやってください」というグループを作りました。かねてより後輩たちのグループによる楽曲制作をしてみたくて、それにトライした感じです。要は、プロレスで言えばタッグマッチをやらせたわけですね。 ――1層の曲『It's Showtime!』に関しては、矢崎さんと石川さんがタッグで作られているのですね。1層からこれまでの『FF14』にはあまりない曲だなという印象がありました。 矢崎: これまでのレイドシリーズでは、観客がいる状態で戦うというシチュエーションがなかったので、歓声が飛び交う中で楽しく戦っているイメージを作りたくて制作していきました。あとはオーダーで、「軽快な感じと、都会的なかっこよさがほしい」というのがあったので、ちょっとジャズチックというか、そんな曲調になっています。 ――アシッドジャズっぽい曲調になっていますよね。: 矢崎: そうですね。そういう雰囲気と、スタジアム感などを合わせて、いまのような感じの曲調になっています。 祖堅: これ初めて言いますけど、じつは東京ドームのファンフェスティバルで録った歓声は、今回の“至天の座アルカディア”全域で使っているんですよ。 ――なんと! アルカディアの観客の声は、まさにヒカセンの声ということなんですね。ストーリーの流れ的に、今後のレイドにもこの歓声が使われていくのですか? 祖堅: いやー、どうなんでしょうね。まだ言えないですけど(笑)。 ――楽しみにしています(笑)。そして2層の『Bee My Honey』は祖堅さんが手掛けられているのですね。: 祖堅: 『FF14』で“電波ソング”を作れるのはここだけかなと思って、振り切った電波曲を作ってやろうと思って作りました。これは速攻でできましたね。半日もかかっていないんじゃないでしょうか。 ――オープニングとエンディングで苦労されたのとは、かなり対照的な(笑)。 祖堅: 「アイドルソングを作ってください」というオーダーだけで、なんのしがらみもなかったので楽勝です(笑)。『FF14』の楽曲は、オーダーやゲーム内容に合わせるといった制約があるので基本的に作るのが難しいのですが、この曲については「アイドルソングを作ってください」だけだったので、制約がゼロのようなものでした。さらにポップな曲は僕にとって簡単に作れるジャンルなんですよ。どちらかというと、“電波の声で歌ってもらう人”を探すのがたいへんでしたね。 ――完成した曲では、ティターニア討滅戦の楽曲も歌われているPaula Kaye Gerholdさんがボーカルを担当されています。: 祖堅: 彼女はラクシュミ討滅戦の曲なども歌っている、弊社のローカライズスタッフです。今回「電波声で歌ってほしいんだ」と伝えたら、「任せろ!」と頼もしい返答をもらいました。 ――改めて確認しますが、歌手の方じゃないんですよね? 祖堅: 違います。あくまでローカライズスタッフです(笑)。 ――楽曲ごとに印象が違って本当にすごいです……! そして3層の『Burning Souls』は石川さんと、石川さんの後輩の方が担当されたようですね。 石川: 3層は“ザ・プロレス”のステージなのでかっこよさを取り入れつつ、ちょっとダサめな感じも入れて作りました。メロディー自体は矢崎を含む後輩2人に骨組みを作ってもらって、そこから自分も参加して楽曲をまとめ上げたという感じですね。 ――そういう意味では3人で作られた形なのですね。 石川: この曲は3人で作りましたね。なかなかまとめるのがたいへんでした。 ――3人で楽曲を作るというのはなかなかないですよね。 石川: 僕は経験がなくて、途中までは本当に完成するのかがわからなくてすごく不安でした。 矢崎: 最初に「どこを誰が担当するか」といったことも話し合わないといけなくて……。 石川: 役割分担を含めて、みんなで相談しながら進めていきました。ひとまず完成してよかったです。 ――そして4層は先ほど祖堅さんから挙げられた『Give It All』ですが、これは祖堅さんとTHE PRIMALSで手掛けられた形ですね。: 祖堅: これはTHE PRIMALSでやってくれというオーダーだったので、そのままドカンと作っていきました。 ――最初に聴いたときから、ノリノリのサウンドでしびれました。 祖堅: これもわりとすぐにできた楽曲ですね。 ――なんと言っても、この曲のボーカルをアメリカのロックバンド“Against The Current”のChrissy Costanzaさんが担当されているのがビックリしました。これはどういう経緯でそうなったのでしょうか? 祖堅: シナリオ班からボーカルの声のイメージとしてサンプルが挙げられたのですが、じつはその中にChrissyさんがいたんですよ。そこでバイオグラフィーを調べてみると、ゲーマーだということがわかったんです。通常、特定の曲に合った歌い手さんを探すのはすごく時間がかかるだけに、“欲しい声質の人で、なおかつゲーマー”だったら、もう直接声をかけてみようと。そうしたら『FF』が大好きだということで、「ぜひやらせてください」という返事をいただいて、トントン拍子で話が進みました。ただ、レコーディング期間が彼女たちのツアーとかぶって、なかなかChrissyさんの時間が空かなくてヒリヒリしました(苦笑)。 ――結果、すばらしいバンドサウンドになったかと思います。: 祖堅: 『Dawntrail』の話題のときに明るい曲を作るのが苦手だと言いましたが、こういった曲調はいくらでも出てくるんですよね(笑)。 ちなみに楽器のレコーディングには裏話がありまして……。THE PRIMALSのレコーディングの日取りを決めて、それまでにアレンジを固めたり準備をたくさんしたりして、「よし明日レコーディングだ」っていうタイミングで、ギターのGUNNさんから新型コロナウィルス感染症になったという連絡を受けたんです。 ――なんと、ではギターは祖堅さんおひとりで? 祖堅: いえ、GUNNさんが来られないことがわかった段階で、すぐに今村に連絡して、「明日レコーディングだから練習しとけよ」と依頼しました。 ――じゃあ今村さんが演奏されたんですね。 今村: 実際はひどい話で、最初は「音出しするから空けておいて」とだけ言われて、レコーディングをするとは聞いてなかったんです。そしていざ現場に行ってみると、レコーディングスタジオでギターを弾く状況になっていて、「なんだこれは……?」と(笑)。 祖堅: いきなり「じゃあ頭からいこうか」みたいな感じだったよね(笑)。 今村: そこから事情を聞いて、最初は僕と祖堅さんで弾くと思っていたのですが……。 祖堅: GUNNさんが休みだということで、今村とは別に並行でドラムのテツさんがもうひとり人を探していたんですよ。以前、どこかのインタビュー記事で「THE PRIMALSが結成するきっかけになったフィクサーがもうひとりいる」ということを話したかと思いますが、テツさんがその方に声をかけていて、今村とそのフィクサーである野村陽一郎さんのふたりが来てくれることになったんです。 だから今回はそのふたりにツインギターをお願いして、自分は完全にディレクションに回りました。レコーディングのときに自分が弾いてさらにディレクションもする形だと、弾いた後に一度プレイバックしてレコーディングをした時間ぶん聴いて確認しないといけない時間が発生して、わりと時間がもったいないんですよ。だからせっかくギターがふたりいるので、僕はディレクションブースでディレクションだけに徹して、どんどんいいテイクを録っていくという流れにしました。すでに用意した自分のギタートラックに更にこの2名のギターを加え、その後療養から復帰したGUNNさんのギターも加え4本のギターが収録された楽曲になりました。 ――ある意味、ケガの功名というか。 今村: 野村さんが来てくださったので、「俺、いらないから帰っていいな。よかった。」と思っていたんですけど、まさかの展開で……。「え? 祖堅さん弾かないの?」って(笑)。 ――あと“至天の座アルカディア:ライトヘビー級”といえば、零式4層の後半で流れる『A Risky Bet』を今村さんが担当されているんですよね。 今村: 僕と後輩のふたりのタッグでやらせていただいています。後輩が優秀なので、だいたいの骨格を作ってもらってから、ギターとかベース、リズム系などを僕のほうでアレンジしました。 この曲はギターを弾いていて気持ちよかったですね。でも零式4層の後半でしか流れない曲なので、聴ける人が限られているのが悲しいところです。ここまでたどり着ける人は多くはないと思うので。 祖堅: レイドシリーズ最初の零式の踏破率は高いから、いままでよりは聴いている人は多いんじゃないかな。 今村: そうだといいですね。もしまだ聴けていない人は、ぜひサントラでチェックしていただければうれしいです。 ――“至天の座アルカディア”に関しては、曲以外にも実況が入るという部分がすごく特徴的でした。これはどのような仕組みでこの実況が形作られているんですか?: 祖堅: 仕組み自体は簡単で、フラグ処理された出来事に対してメッセージウィンドウが出ると思いますが、そのメッセージにボイスが紐づいている感じですね。仕組み的には単純ですが、いままでにこのようなことはやっていなかったので、実験的なチャレンジの側面もありました。 結局、曲調と歓声だけではこの“至天の座アルカディア”というレイドの雰囲気は出せなかったなと思います。さらに、ほかのサウンドの素材全部が実況を入れても成り立つバランスで整えられていたので、うまくハマったという感じですね。 ――そういう意味では、攻撃アクションの音なども含めると、非常に音数の多いレイドと言ってもいいかもしれません。 祖堅: 音数と言えば、今回の拡張版の効果音は非常にたいへんでした。いつも「そんなに発注がきても作れねえよ!」と言っているのに、どんどん発注量が肥大化していって……。結果、今回は前回の6.0に比べて効果音の物量が1.8倍だったんですよ! ――あの『暁月のフィナーレ』の1.8倍! とんでもなく増えていますね……。 祖堅: おかしいんですよ。じゃあサウンドチームの人数は1.8倍になったかというと、まったくそういうわけではなく、あいかわらず地獄でしたね(笑)。 ――それだけ細かく「ここはこういう音を入れたい」っていう要望があったんですね。 祖堅: 「新しい技には新しい音が鳴るべき」という思いがあるので、どうしてもそうなりがちですね。やっぱり画と音がリンクしないと違和感が生じてしまいますから。さらに今回、調整がたいへんだったのが、グラフィックアップデートにともなって、草がリッチになったことです。 ――それがどのように音に影響したのでしょう? 祖堅: 草がリアルになったぶん、それが風でたなびいたときや、キャラに接触したときにガサガサ音が鳴らないと不自然になってしまいます。だったら単純に草が動いたら自動で音を鳴らせばいいと思うかもしれませんが、そうもいかないんです。たとえば“至天の座アルカディア”の実況もそうですが、音を鳴らすためには音を鳴らすきっかけが必ず必要なのです。技だったら技が出るエフェクトなどがSEを鳴らすためのきっかけになるのですが、草はそういったきっかけを誰も管理していないんですよ。 ――SEを鳴らすタイミングが計れないということですね。 祖堅: ちょっと難しい話になりますが、通常の音の再生の仕組みは、命令が必ずCPUを通っていて、システム側で監視ができます。いつどこで誰がどういう音を鳴らすといったことや、命令が来たらどうするかといった仕組みができているのですが、草は命令のきっかけになるものがじつは存在しないんですよね。それはなぜかというと、草の揺れはグラフィックボード上のGPU内で処理されているので、CPUに命令が飛んできていないのです。 ――だから、それを連動させるようなシステムをイチから作る必要があったということですね。 祖堅: はい。要は、「いま草がキャラクターに接触することによって音が発せられました」という判定をする仕組みを作らなければいけなかったんです。それがめちゃくちゃたいへんでした。 ――グラフィックスアップデートの影響が巡り巡ってそんなところにも……。 祖堅: さらに風の向きが変わると草の動きも違ってきますし、風には強弱もあるのですが、それらはGPU内で勝手に処理している部分なので、“いまどの向きから風が吹いていて、草がどういう風にたなびいているのか”は、ゲームシステム上では管理されていなかったんです。そういったもろもろの踏まえての仕組みを作るのは骨が折れました。 ――そこまで手を入れられたとは、まったく知りませんでした。 祖堅: こういう問題って意外と多いんですよ。当たり前のように音が鳴っている部分についても、独自の仕組みが必要だったりします。でも今回はBG班とプログラマーたちががんばってくれて、なんとか大きな不具合もなく実装できたのでホッとしています。 ――今後もそういったサウンドの改良は、まだまだ続いていく可能性がありそうですね。 祖堅: ずっと続けていますね。皆さんご存じないとは思いますが、6.xのときもサウンドシステムは結構マイナーアップデートをしているんです。これだけエフェクト音がたくさん鳴る環境ですと、自分の放った技の音が聞こえにくくなってしまう現象が多々発生します。ですから“いかに自分の出した音を聞きやすくするか”というシステムは、パッチごとにアップデートを重ねています。音自体のアップデートではなく、聴こえかたの仕組みをアップデートしている感じですね。自分とパーティとそれ以外の人の音をフラグ化して、優先順位を変える仕組みを作ったりとか、相対音量を変える仕組みを作ったりとか、本当にいろいろとやっています。 ――それと曲作りを並行して行っているわけですから、作業量は膨大ですね……。 祖堅: でも好きなので! あと仕組みは考えるものの、実際にそれを作業するのはプログラマーですし、起案や確認をするのは優秀な後輩たちですから本当に助かっています。 THE PRIMALSのライブBlu-rayには特典映像を収録! ――ようやく今回のインタビューの本題になりますが、10月30日に『DAWNTRAIL』のサウンドトラックが発売されるにあたって、見どころや聴きどころなどをおうかがいできれば。: 矢崎: いままでのサントラもそうですが、今回も収録されている映像については、どのスクリーンショットをどのタイミングで、どういう順番で見せるかというところまでみんなで話し合って決めています。もちろん、ストーリーに合わせて並べてはいますが、「曲が盛り上がるこのタイミングでこの画を見せたい!」といったように、こだわって作っているので、音楽だけでなく映像にもぜひ注目していただけたらうれしいです。曲ごとに「こういうシーンがあったな」ということをちゃんと追体験できる映像になっていると思うので、このサントラで改めて『黄金のレガシー』の冒険をふり返っていただきたいですね。 そして私も今回から何枚かスクリーンショットを撮らせていただきました。きれいな景色はもちろん、プレイ体験を思い出してちょっと笑えるところまで、ヒカセン目線全開で撮影した写真がたくさん入っているので、ぜひ注目していただけるとうれしいです。 ――今回もサウンドチームの皆さんでスクリーンショットを撮影されたのですね。 祖堅: おもに若者が撮影しました。おじさんは撮るのがへたくそなので(笑)。 ――そして、今回も楽曲ごとにコメントが用意されているのでしょうか。 祖堅: はい。担当したスタッフのコメントが書いてあります。連名のコメントもありますし、すべて英訳もされていますので、日本語がわからない方でも楽しめると思います。 また、今回も楽曲はすべてハイレゾで聴けるようになっていて、かつすべての楽曲のMP3のデータも同梱されています。ディスクからパソコンやスマートフォンにデータを転送できるようになっていますので、ぜひディスクを手に取って映像とコメントと楽曲を、それぞれ楽しんでもらえるとうれしいですね。 ――映像作品といえば、先日開催されたTHE PRIMALSの横浜アリーナ単独公演ライブも映像化されるということで、そちらの見どころもお聞かせください。 祖堅: 基本的に9月21日のDAY1の模様を収録していますが、22日のDAY2の素材も使っていて、どっちもいいところが収録されています。またBlu-rayの映像作品は、たいていMC をすべてカットしているのですが、今回はライブ中の流れもあったので、MCを入れていて、その点も注目かもしれません。そしてまだ完成していないのですが、メイキング映像も特典として収録されています。たぶん、たいへんなことになっているんじゃないかな(苦笑)。 また見どころとしては、プレイヤーから募ったエオルゼアの日常や、これまでにくり広げた旅路のバトルなどの映像を総集編にしたものがあります。ライブ中はその画を背負って『ENDWALKER』を演奏したのですが、Blu-rayではその映像だけを別途特典として収録しているので、全ヒカセンに見てほしいですね。僕はその映像の編集段階で泣いてしまいました。 ――あの映像は感動しました。ヒカセンの皆さんのそれぞれの思い出が映像から伝わってきて……。 祖堅: 何気ない日常を入れたかったのですが、たくさんの方に送っていただけて本当によかったです。おじさんはこういう映像見ちゃうと泣けてきて……。 ――ほかにも『ENDWALKER』は盛りだくさんでしたね。ジェイソンさんやアマンダさんの歌もあり、伊藤友馬さんのバイオリンもありと。 祖堅: “全員野球”でしたね。もちろんそのライブ映像もあるので、お楽しみにお待ちください! ――お答えできる範囲で結構ですが、もうすぐ公開される7.1についても……。 祖堅: 7.1の作業はほぼ終わっています。でも何ひとつ言えません、ごめんなさい! ――“エコーズ オブ ヴァナ・ディール”で流れるであろう『FF11』の楽曲がどういう形になっているのかがすごく気になるところですね。 祖堅: それはぜひ7.1でお確かめいただければ、としか現状では言えません。ごめんなさい。ぜひ実際にプレイして楽しんでいただけたらなと。そして、我々はもう7.2の作業に着手しているので、7.2もお楽しみに! ――最後に『黄金のレガシー』のプレイを通して楽曲を聴いてくださった方や、これからサントラで楽曲を聴いてくださる方々に向けて、ひと言ずつメッセージをお願いします。 石川: いつもプレイしていただいてありがとうございます。僕個人の話になるのですが、『漆黒のヴィランズ』、『暁月のフィナーレ』、『黄金のレガシー』ときて、回を重ねていくごとに「プレイヤーの皆さんに喜んでいただけるサウンドは何か」を、感覚として掴みつつあると感じています。引き続き自分の出せる力の120%、150%を出して、これからもがんばっていきたいと思います! 矢崎: 6.1から曲を担当させていただいて、今回で初めて拡張パッケージに参加させていただきました。自分が担当した曲が、プレイヤーの皆さんに届いて、どういう風に受け止められたのかということを体験させていただきましたが、やはり初めてのことばかりで学びになったところがすごく多かったです。それを今後に活かして、「この曲がゲームにマッチしていてよかった」と引き続き言ってもらえるようにがんばっていきますので、ぜひよろしくお願いします。 今村: 今回の『黄金のレガシー』は、作っている側としても、フレッシュに曲作りができたと思っています。実際ゲームを遊んでみても、フレッシュな感じで楽しめました。今後もゲーム内の雰囲気をじっくりと味わいながら曲を作っていきたいなと思っていますので、光の戦士の皆さん、これからも楽しみにしていてください。 祖堅: いつも通り、ゲーム体験をよりよいものにするために、一生懸命サウンドを作っているわけですが、これからも当然そのポリシーを変えるつもりはありませんし、それを第一の目標にして突き進んでいきます。今回の作業で後輩たちが本当に育ってきて、「仲間になったな」という感じがすごく強かったのでホッとしています。 ――まさにパーティで曲を作っているイメージですね。 祖堅: 本当にそんな感じです。だからバラエティーさも出せるようになったと思いますし、単純にクオリティーもアップし、1曲に対してかけられる時間もいままでに比べると少しマシになってきたところがあります。ありがたいという気持ちとともに、「こいつらだったら、きっともっとやってくれるだろう」と期待しています。『黄金のレガシー』の冒険はまだまだ続きますが、僕自身も今後が楽しみです。光の戦士の皆さんといっしょにこの拡張を引き続き楽しんでいこうと思っていますので、よろしくお願いします!