【丸岡いずみのOur Street】負うた子に教えられ、佐渡島の魅力発見旅【徳島新聞連載】
「負うた子に教えられ」という言葉がありますが、最近はまさに息子からいろいろな情報を教えてもらっています。 米津玄師さんのライブに初参戦!地元記者、CDは3種類買いました 【地元記者、米津さんにハマる】 今年、世界遺産に登録された新潟県の「佐渡島の金山」。登録されるずいぶん前から息子は「佐渡島に行ってみたい」と言っていました。 「どうして佐渡なの?」と聞くと、「たらい舟に乗りたい」「トキを見てみたい」「金を採りたい」とのこと。こうした情報をどこで6歳の息子が得ているのか? それは全て動画サイト「ユーチューブ」からでした。 保育園の年長さんから小学生まで、今大人気なのが佐渡のユーチューバー「けえくん」です。けえくんが作詞作曲した佐渡島の歌は、佐渡の名産や佐渡でしか見られないものがこれでもかと詰まっています。楽しい映像と相まって、子どもたちはこの歌が大好き。それを見て、息子も佐渡への思いを募らせたようでした。 最初は「こんなに盛り上がっているのはうちの子だけ?」と思っていたのですが、同じ歳の息子さんを持つ知り合いのスタッフに聞くと、「うちの子も毎日、けえくんのユーチューブを見てます!」とのこと。 ならば、佐渡金山がめでたく世界遺産に登録されたことだし、「息子と旅行しよう!」と計画を立てました。 私自身は佐渡に行くのは2回目。1度目は取材で行ったので、観光するのはほとんど初めてです。 佐渡島の港に着くと、「いごねりあります」との看板が。「いごねりって、お菓子?」と私がとぼけた質問をすると、息子が「何言ってんの。いごねりは海藻だよ!」と教えてくれました。 息子は全てをユーチューブで予習済みなのです。見た目は茶色いこんにゃくのようで、食感は寒天とモズクを足したような感じです。酢じょうゆや、さまざまな味付けでいただきますが、さっぱりしていてとてもおいしかったです。 息子が特に楽しみにしていたたらい舟の乗り場に行くと、チケット売り場にはけえくんのサイン色紙が飾られ、子どもたちが一生懸命スマホで写真を撮っているではないですか。多くの子どもたちが、けえくんがデザインした「I♥佐渡」と書かれたTシャツを着ていてびっくりしました。まさかこんなにたらい舟に乗りたい子どもたちが多いとは...。 たらい舟の漕ぎ手は皆さんベテランの方たちばかり。このブーム!? について伺ってみると、「けえくんが頑張ってくれてるおかげだよ。ユーチューブいうやつですか? すごいよね~。それまではこんなににぎわってなかったからね」とおっしゃっていました。 皆さん、若者がユーチューブで佐渡島の魅力を発信してくれ、その効果が絶大であることに驚いていらっしゃるようでした。 私たちが観光に訪れた時は、佐渡金山が世界遺産に決まって間もなくだったこともあり、多くの人たちでにぎわっていました。人口5万人の島にある宿泊施設は、土日は全て満室で予約するのも大変でした。 島の人たちに伺うと、世界遺産に決まったものの、観光客の受け入れ態勢がまだまだ整っていないとのことでした。高校を卒業して島に残る若者も少なく、そもそも働き手が足りない状況。けえくんのような存在は、もちろん少数派です。 島の観光課もけえくんを全面的に押し出し、観光案内のパンフレットにも佐渡で採れた海洋深層水を両手に持ってほほ笑むけえくんの写真を掲載しています。この海洋深層水もTシャツ同様、子どもたちに大人気。Tシャツも当初は大人サイズしかなかったそうですが、急きょキッズサイズを製作したとのことでした。 世界遺産登録の機運に乗って島の観光誘致を進める行政と、若者人気ユーチューバーの存在。若い人たちの声を取り入れた、島ならではの商品の開発にも力を入れています。 少子高齢化が進む上、地元から出ていく若者も多いという点は徳島県も同じでしょう。観光産業で島を盛り上げようとしている佐渡島の取り組みは、徳島の各自治体もまねができる点が多いような気がしました。 「負うた子に教えられた旅」。次回はどんなことを教えてくれるか楽しみです。