500年前に沈没した英チューダー朝の軍艦、回収された乗組員の骨が示す驚くべき洞察
(CNN) 英国の沈没船「メアリー・ローズ号」から回収された保存状態の良い骨が、乗組員の生活様式を明らかにし、骨の化学的性質の変化について驚くべき洞察を示していることが分かった。学術誌「プロスワン」に先月30日に掲載された研究で明らかになった。この洞察は現代の医学研究に役立つ可能性がある。 【画像】1982年11月10日に引き揚げられたメアリー・ローズ号の艦体 メアリー・ローズ号は、1545年7月19日にフランスとの戦いで沈没するまで、ヘンリー8世の治世下だったチューダー朝の海軍が保有していた最大規模の軍艦だった。船がワイト島と英国本土の間のソレント海峡で沈没したとき、数百人の乗組員が船内に閉じ込められた。 1982年、船体とその遺物、乗組員179人の骨が同海峡で発掘され、海面に引き揚げられた。船体とその収集物1万9000点は、英ポーツマスにあるメアリー・ローズ博物館に展示されており、乗組員の身元と生活様式を明らかにするため遺物の研究が進められている。 研究者らは、メアリー・ローズ号で死亡した13歳から40歳までの男性12人の鎖骨を分析。船上での任務が骨の化学的性質をどのように形成したかを調査した。また、老化の明らかな兆候や利き手の証拠についても探った。 この研究結果は加齢に伴う骨の変化について理解を深めるのに役立つ可能性がある。
メアリー・ローズ号の永続的な神秘性
王位継承から1年後の1510年、ヘンリー8世は王立艦隊に2隻の軍艦を新たに追加する要請を承認した。メアリー・ローズ号もその1隻で、国王が重宝した旗艦となった。 同艦はフランスのブレストで12年、フランス軍との戦いに参加し、45年にフランス艦隊による大規模侵攻で最後の戦いに敗れた。船の回収以来、多くの研究が行われたにもかかわらず、沈没の原因については疑問が残ったままだ。 研究の共著者でメアリー・ローズ博物館の研究責任者アレックス・ヒルドレッド氏によると、「原因が何であれ、船は右舷側に傾き、開いた砲門から水が入り込んだ」。 甲板間には出入りできる場所がほとんどなく、500人が船内に閉じ込められたという。 研究の筆頭著者でランカスター大学のメディカルスクールの研究員、シェオナ・シャンクランド氏は、何百年もの間、水中にあったにもかかわらず、船の上にたい積した沈殿物の層が酸素のない環境を作り出したことで、遺物は驚くほど良い状態で保存されていたと話す。