【高校サッカー選手権】2回戦屈指の好カードは市立浦和がPK戦の末に武蔵越生を下す
第103回全国高校サッカー選手権埼玉予選は10月20日、インターハイ(総体)県予選準優勝の西武台などシード勢が登場し、県内各会場で2回戦15試合が行われた。今夏の総体で初優勝した昌平は10月26日の3回戦が初戦となり、西武文理との対戦が決まった。 【フォトギャラリー】武蔵越生 vs 市立浦和 県1部(S1)リーグ同士が2回戦で唯一顔を合わせた屈指の好カードは、市立浦和が2-2からのPK戦で武蔵越生を下し、3回戦で関東高校大会予選覇者の正智深谷と激突することになった。 4バックでスタートした市立浦和は、前半17分までに早々と2点を失った。大野恭平監督は「緊張と自信のなさが原因」と述べ、さらに具体的な要因を聞かれると「前からプレスをかけず、相手に攻めさせておいてからカウンターを狙っていたらやられてしまった」と解説した。 この直後に守備ラインを3バックに変更して体制を整えた。 3人で厳しく応対して最後尾を安定させた上、攻めるしかない思いもプレーに表れると有効なサイドアタックが展開され始めた。 前半25分、右2列目の嶋田秀太朗(2年)の右クロスを1年生FW大前海斗が合わせたが、わずかにバーを通過。32分にも嶋田の右からの最終パスを同じく1年生MF中沢壮佑が打ったがこれも左に外れる。そうして嶋田の絶品パスからの“3度目の正直”が実る。33分、大前が嶋田の右クロスを遠いポストから頭で押し込んだ。前半に1点を返したのが大きかった。 同点弾は後半開始30秒過ぎだ。きっかけは、またもや嶋田の右からのクロスだった。MF横井葵(3年)のシュートをGKが弾き、大前がこぼれ球を拾って豪快に蹴り込んだ。 8月24日のS1リーグ後期開幕戦から先発で起用される大前は、「スピードとゴールへの嗅覚が持ち味です」と話し、大事な試合での2得点には「初めての経験なのでうれしい」と笑みが絶えなかった。 小学3年からフットサルを始め、さいたま市立美園中ではU-18日本代表候補合宿にも参加し、サッカー部とフットサルの“二刀流”で活躍。「足裏などを使うフットサルはサッカーのスキルが凝縮されているんです」とうれしそうに語る。 武蔵越生は7月14日のS1リーグで市立浦和に5-2と大勝。そんな自信からか前半4分にいきなり先手を取った。FW髙橋悠太(3年)の強シュートをGKが弾き、FWオビエゼ泰賀チゴゼ(3年)が押し込んだ。 その後も出足良くボールに先んじると、髙橋の力強いドリブルなどで攻め込んで主導権を握った。そんな流れだった17分、ボランチ中嶋修斗の右クロスをFW森一馬(ともに2年)がヘディングでうまく合わせ、首尾よく2点目を挙げた。 同点にされてからは後半21分に髙橋、33分に中嶋が決定的なシュートを放ったが決められず、市立浦和も26分にMF千葉琉生(2年)のシュートのこぼれ球を大前が狙ったが逸機。延長でもともに無得点に終わり、2-2のままPK戦へもつれ込んだ。 そろって3人目までは成功したが、先行の武蔵越生は4人目が外し、市立浦和は確実に沈める。武蔵越生の最終キッカーがポストに当ててしまい、4-3で熱戦が決着した。 大野監督は「後半すぐに追い付けたのが大きかった。ホント勝てて良かったです」とひと息つくと、「リベンジするには最高の相手」と話し、9月7日のS1リーグで0-6と大敗した正智深谷との3回戦に闘志をたぎらせていた。 1年生だった昨季もゴールを守ったGK堀田悠空は、前日のPK練習では9本受けて6本も止めたそうだ。「第2キーパーだった中学時代もPK戦になると出場していました。自信はあった」と胸を張る。雰囲気や貫禄からか、2人のキッカーのミスを誘ったのかもしれない。「ハイボールに特化した練習を重ね、試合でもできるようになった。次は正智深谷に絶対勝ちたい」と意気込んだ。 S1リーグでは大勝した武蔵越生だが、井上精二監督は「今年のチームは勝負弱いですね。うちはリーグ最多失点と守備には不安がありましたが、もう少し背後の対応ができなかったか……」とリードを守れなかったことが残念そうだった。 (文・写真=河野正)