「つみたてNISA」のために新設されたインデックスファンド、何が問題なの?
積み立て投資に限定した少額投資非課税制度「つみたてNISA」の口座開設手続きが始まりました。20年という長期にわたる非課税期間は前例がなく、金融庁が税務当局とのハードネゴシエーションで実現させた、生活者のための長期資産形成に資する仕組みであり、金融庁の制度普及に向けた意気込みは並々ならぬものが感じられますが、ここに関与する金融機関の多くは当該制度に違和感を訴え、今のところ決して取り組みに前向きとは言えないのが実情です。
なぜ金融機関は「つみたてNISA」に乗り気ではないのか
その理由は明確で、「つみたてNISA」では販売手数料が取れない、そして非課税枠の上限が年間40万円と少額である上に、積立投資でしか資金を集められないとなれば、経営サイドとして収益事業にならないと判断しているからです。さらには対象商品が厳格な条件をクリアした投資信託に限定されています。業界の売れ筋ファンドはことごとく排除されたとなっては、いくらお上の意向には逆らえないことを承知していても、いわゆる面従腹背でカタチだけ整えてあとは洞ヶ峠を決め込むとの経営判断は、業界常識に鑑みれば想像に難くないことです。 しかし金融庁は「つみたてNISA」を森信親金融庁長官主導で進めてきた金融改革における重要な仕上げの制度のひとつと位置付けているに違いありません。とりわけ今春、当局が打ち出して大半の金融機関が採択することになった「顧客本位の業務運営」原則に対する理解度と実践度合いを測る試金石として構築されたものと捉えるべきでありましょう。 金融庁は、「つみたてNISA」が業界サイドの短期的利益には直結しないことを百も承知の上で、この制度を通じて長期資産形成に一般生活者を誘うこと自体が顧客本位の実践である、と確信的に定義しています。だからこそ各金融機関の取り組み動向の本気度と、その成果を冷徹に見極めたいと考えているはずです。そして取り組みの積み上げが金融機関の長期的な成長戦略に資するとの前提で、森長官が講演でいみじくも言及した「顧客本位が組織に根付いた金融機関が発展し、顧客本位を具体的行動につなげられない金融機関が淘汰される市場メカニズムの構築」につながる実例とするのではないでしょうか。