関東学院大ラグビー大麻事件で活動自粛、意識失い脳てんかん闘病→開頭手術「なんで俺だけ…」波乱万丈すぎるラグビー人生・土佐誠38歳は今
開頭手術、発覚から3年で復帰
NECのロッカールームで隣だったのが、元ウェールズ代表のガレス・デルヴという選手だった。彼が別のチームで主将をしていた頃、同じ状況から手術で復帰したジュリアン・ハクスリーという選手がいたことを教えてもらった。繋いでもらい、彼の経験談とアドバイスを受けた。 2014年、土佐は開頭手術に踏み切った。術後の経過を見ながら、リハビリを開始。しばらくして運動が許可されても、低いタックルへの恐怖心は消えなかった。時間をかけて少しずつ、怖さを取り除いた。そして、発覚から3年が経った30歳で復帰。開頭手術から復帰するのは、ラグビーなどコンタクトスポーツでは日本で初めてのケースだと担当医から告げられた。 「それまで自分の近い周りしか見えてなかったんです。セミプロだったので、職場の方のため、社員として働いているこのチームのために勝とう。社会に与える影響なんて考えたこともなかった。でも病気になって、同じような状況の人を結構探したんです。別の同じ状況の人も、きっと誰か探すんだろうなって。そうやって探したときに、土佐誠っていう人が元気に復活しましたって見つけたら、勇気付けられるかもしれないなと思ったんです」 復帰後、土佐は選手を続けながら東海大学の大学院に入学し、コーチングを学んだ。そのタイミングで、三菱重工相模原ダイナボアーズとプロ契約を結ぶ。今まで働いていた時間を勉強に充てた。 誤算だったのは、大学院を修了したタイミングでコロナ禍になったことだ。時間があり余る中、指導者の先のキャリアについても考えるようになった。どんな業界でも、トップで働く人は必ず、ビジネスやマネジメント知識を持っている。自分にもその必要性を感じた。 ラグビーをやってきた経験を活かしながら、MBAを取りたい。行き先は自然とイギリスに絞られた。 「ネットワークを広げるという意味で、オックスフォードにもう一度行くのもアリでした。でも、そのライバルと言われる学校に行って、両方でブルーを取るというのも面白いなと思ったんです」 昨シーズン限りで現役を引退した土佐は、同年の夏、ケンブリッジ大学のジャッジ・ビジネススクールに合格。引退後も三菱重工で社員として働いたため、日本とイギリスの往復生活が始まった。 《後編に続く》
(「ラグビーPRESS」中矢健太 = 文)
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