「難民支援、日本の立ち位置は強みに」UNHCR駐日代表、伊藤礼樹氏インタビュー
「選挙の影響も大きいと思うが、移民・難民問題を一部の政治家が意図的に使って恐怖を煽り、SNSが助長している。ある程度の懸念は理解できるが、自国への流入を抑止することのみを目指した政策ではなく、難民の出身国、避難先の国、その避難途中での支援・保護の枠組みも重要だ」
--日本国内の難民の状況はどうみているか
「難民認定されているのは申請者の4%ほどだが、(条約上の難民ではないが難民に準じて保護する)補完的保護対象者なども含めれば20%ほどが保護されている。EU諸国ではその2倍以上だが、海に囲まれた日本と地続きのEU諸国とは文脈も申請者の背景も違い、単純に比べても建設的な議論ができるとは限らない」
--日本の難民政策・議論をどう評価するか
「世論は難民への関心が薄く、(受け入れか排除かの)極端な二元論に偏っている印象がある。難民認定の解釈を広くし、認定プロセスを改善することだ。透明化し、効率的で効果的にすることで保護が必要な人は迅速に措置し、不要な人には帰国など別の解決が見つけられる。就労目的で難民申請される懸念があるなら、就労目的に沿った受け入れ制度を改善するといった取り組みが効果的ではないか」
--埼玉県川口市の一部地域で、市民とクルド人との間で軋轢(あつれき)が生じている
「クルド人が出身国で迫害されているかいないか、という簡単な二元論では語れない。どこの国の申請者であれ一人一人の個別事情などを審査しなければ迫害の有無は分からない。プロセスがしっかりしていないから、いろんな問題が起きる」
--日本にとって難民問題はなぜ他人ごとではない、といえるのか
「非常に難しい質問だ。ただ、紛争などで生じる難民問題を解決することは、地域や世界が『非秩序化』するのを防ぐことにもなる。難民対策を名目に政治的影響力を伸ばそうとする勢力に対抗する意味でも、難民の支援・保護は日本の国益にもつながるはずだ」
--日本ができることは