「レイトン教授VS逆転裁判」が本日で12周年! ナゾトキ、裁判、両者のファンどちらをも満足させた見事なコラボレーション作品
レベルファイブの「レイトン教授」シリーズと、カプコンの「逆転裁判」シリーズが共演を果たしたニンテンドー3DS用ナゾトキ・法廷アドベンチャー「レイトン教授VS逆転裁判」。 【画像】世界観は「レイトン教授」寄りだが、ゲーム全体として見ると、捜査パートが「レイトン教授」になった「逆転裁判」、というのが一番しっくりくるだろう 本作は、魔法が現実に存在する世界にて、両シリーズのキャラクターが「魔女裁判」で戦う姿を描いている。主にアドベンチャーパートが「レイトン教授」、裁判パートは「逆転裁判」が担当し、音楽もそれぞれのパートに合わせてアドベンチャーパートはレベルファイブが、裁判パートはカプコンが作成している。 シナリオはレベルファイブの日野晃博氏とカプコンの巧舟氏を中心に作られており、BGMはレベルファイブの西浦智仁氏とカプコンの北川保昌氏で作られているという、夢のコラボレーションが実現した。 また、「逆転裁判」ではこれまで開発スタッフによる「異議あり!」など一部しかボイスがなかったが、「レイトン教授」シリーズに合わせて本格的にボイスが導入され、成歩堂龍一と綾里真宵は当時ほぼ時期を同じくして公開された実写映画版「逆転裁判」と同じ声優となっているのも特徴だ(※成歩堂役は、成宮寛貴さん。真宵役は桐谷美玲さんが演じている)。 「レイトン教授」シリーズは、そもそもレイトン教授役を大泉洋さんが、ルーク役を堀北真希さんが演じているということもあり、豪華俳優陣の共演作となった。 本稿では、そんな「レイトン教授VS逆転裁判」の魅力を振り返りたい。 ■ 「VS」というよりは「&」が近い 本作のタイトルに「VS」(※「バーサス」ではなく「ブイエス」と読む)とついていることから、レイトン教授と成歩堂くんの対決のように見えるが、実際には現実世界から成歩堂くん、真宵ちゃん、レイトン教授、ルークの4人が「ラビリンスシティ」と呼ばれる異世界の街に迷い込み、魔女裁判や街に隠された謎に4人で共に挑むという、「&」の表現のほうが正しい雰囲気の作品だ(一応対決する場面もあるにはあるのだが)。 4人はこの中では不思議な力を持たないことになっているため、真宵ちゃんの霊媒の力などは封印されており、不思議な力はあくまでラビリンスシティの住人のみが持つ。 世界観的にはややファンタジー寄りな「レイトン教授」シリーズに近い雰囲気となっているが、魔女裁判という本作のテーマが「レイトン教授」と「逆転裁判」を上手く引き合わせる材料となっている。 アドベンチャーパートでは、町の人から情報を集め、現われるナゾを解きながら、捜査を進めていく。「レイトン教授」シリーズではおなじみの「ひらめきコイン」も登場し、背景などに隠されている。ナゾトキの際に使うとヒントを見ることができるアイテムだ。 背景の中には、コイン以外に「隠されたナゾ」が潜んでいることもある。 裁判パートは、証言の中から矛盾を探して証拠品をつきつけるという、概ねいつもの「逆転裁判」。ただし本作の中盤から発生する魔女裁判では、一度に複数の証人を尋問する「群衆裁判」というシステムがある。後に「大逆転裁判」にも引き継がれたシステムだ。なお、アドベンチャーパートで得たひらめきコインを裁判パートでも使うことが可能になっている。 裁判パートでは成歩堂くんがメインのプレイヤーキャラとなり、レイトン教授はサポート役となる。 最初はレイトン教授とルーク、成歩堂くんと真宵ちゃんという組み合わせでストーリーが進んでいくが、段々シリーズの枠を超えた組み合わせも発生していくようになる。4人全員が主人公、といった感じで、全体的には「レイトン教授」シリーズにも「逆転裁判」シリーズにも偏ることがないバランスのとれたシナリオとなっており、両者のファンどちらにも不満を抱かせない、非常に見事なコラボレーション作品だった(最後の最後でレイトン教授の独壇場にはなってしまったが……)。 特に「逆転裁判」ではただの作業でダレがちな捜査パートが「レイトン教授」シリーズのナゾトキによってぐっと面白くなっており、これは本作ならではのオリジナリティであり、魅力だ。 ■ コラボレーションならではの工夫があちこちにあった 全体的にレトロな雰囲気の「レイトン教授」と、現代的な「逆転裁判」の融合ということもあり、本作では色味なども丁寧に調整されている。実際に画面を見てみると、「レイトン教授」のほうは僅かに彩度が高めに、そして「逆転裁判」のほうは彩度を落とした画作りになっているのがわかるだろう。 そして「逆転裁判」は本作がシリーズ初の3D化作品となっているため、3Dモデルもレイトン教授らと並んだ時にできるだけ違和感のないように調整されている(なお、レイトン教授も本来のシリーズよりも頭身が高くなっているので、「レイトン教授」ファンには若干視覚的なギャップがあったかもしれない)。 3Dモデルのアニメーションも良くできており、後に発売された「逆転裁判5」でも本作の経験が活かされていたと感じられる。また、ナゾトキに登場するデフォルメされた成歩堂くんや真宵ちゃんの姿も、とても可愛くできていた。 さらに背景のグラフィックが、当時の3DS作品の中でもかなり美麗なほうで、細かな作り込みには感嘆の声を漏らしたものである。 本作には前述の通り巧氏が参加しており、巧氏はこの当時本家「逆転裁判」ナンバリング作品に参加していなかったこともあって、氏のファンにとっては非常に貴重な一作となった。 巧氏ならではの独特の言い回しや、個性の強い人物らは本作でも健在。 それもあってか、「レイトン教授」シリーズの登場人物にもかなりしっかりと個性付けがされ、それでいて「レイトン教授」シリーズファンを裏切るような性格にはなっておらず、いい塩梅で肉付けされたのは、このコラボレーションならではだ。 そういう意味では、「逆転裁判」パートのほうが「相変わらず」感はあった。パン屋で働く成歩堂くんが出てきた時には笑ったものだ。 裁判パートでは、巧氏が「科学捜査がまったく通じない世界」ならではの戦いを、見事に描いてくれている。魔法大全という、レイトン教授が成歩堂くんのために用意した本にはラビリンスシティの魔法が全て記されており、魔法大全を「つきつける」ことで証拠品として使用する事ができるのだが、この魔法大全を上手く使いこなしながら進めていく裁判は、「逆転裁判」シリーズに慣れている人でも全くの新感覚でプレイできるようになっていた。 もちろん、恒例の「異議あり!」を唱えるのは成歩堂くんだけに限った話ではない。コラボレーションならではの展開には、目を見張るものがあった。 ちなみに裁判パートでは、「逆転裁判」シリーズお馴染みのライバル検事が登場。ジーケン検事は騎士で、魔女を裁く「検察士」。「レイトン教授」シリーズと「逆転裁判」シリーズ、ふたつの作品を繋ぐ中間点のようなキャラクターとなっており、本作のファンからも非常に支持されたキャラクターのひとりとなった。 ■ 全く雰囲気の異なるふたつの作品を見事に合体させた良作 どちらの作品のファンにも考慮したのか、本作は捜査パートも裁判パートもあまり難しい箇所はなく、全体的に難易度は低めに作られていた。特にひらめきコインでヒントが示されるということもあり、かなり親切な作りになっていた。 これについてはもちろん両者のファンからは賛否両論あるとは思うのだが、筆者としてはプレイしやすく、良い匙加減だったと感じている。 特に筆者はこの作品で初めて「レイトン教授」シリーズに触れたのだが、この作品をきっかけに「レイトン教授」シリーズをプレイしてみることになった。筆者のようにこの作品を足掛かりに、プレイしたことのなかった作品に興味を持つきっかけとなったことを考えれば、難易度は易しめくらいでちょうどよかったのだろう。 物語は比較的長丁場なので、これで謎解きの難易度が高いと、プレイする気持ちが保てなかったと思う。 本作のラストはそれこそ賛否両論あるのだが、筆者はあの展開に非常にドキドキしたほうのひとりだ。詳しくはネタバレになりすぎるので控えておくが、終盤のジェットコースター感、明かされる真実、個人的なツボはドンピシャで突かれた感があった。もちろんツッコミたい部分もあるのだが、勢いでわぁっと遊べたので全てヨシ! ちなみにこの時はまだ「レイトン教授」シリーズをプレイしたことがなかったのでわからなかったのだが、「レイトン教授」をプレイしてみると、意外と「細かいことは良い」感のある物語で、「なるほどまさにこれ」と思ったものだ。このラストの展開の是非はどちらの作品のファンなのか、どちらも好むプレーヤーなのかなどによっても変わってきそうではある。 BGMは、現代的なサウンドの「逆転裁判」シリーズの楽曲が中世っぽい世界観に合うようにストリングスやアコーディオン中心のアレンジで展開されており、素晴らしかった。「レイトン教授」シリーズのBGMも、「逆転裁判」シリーズのBGMも、新曲も、とにかくスケール感が素晴らしく、オーケストラって良いな、としみじみ感じさせられた。 指紋鑑定すらできないという世界の中で成歩堂くんがどう戦っていくのか、レイトン教授のおいしいところをかっさらっていくカッコよさ、この2点だけでも「外伝的な作品だからプレイしなくてもいいや……」なんて思ってしまうのはもったいない出来となっている本作。 レベルファイブとカプコンのコラボレーション作品である他、様々な問題からなかなかリメイクなどはされにくいのだろうかとも思うのだが、できれば3DS以外でもプレイできるようになると嬉しい作品のひとつだ。 (C) 2012 LEVEL-5 Inc. (C) CAPCOM CO., LTD. 2012
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