韓国語講師として大学の教壇に、学生たちに聞いた「心の底から韓国語を学びたい」理由
30歳にして韓国に初留学した在日コリアン3世の韓光勲(はん・かんふん)氏。留学を終えて日本に帰国した韓氏が、大学で韓国語を教えることになった。学生たちが韓国語を学ぶ理由とは。それに対して韓氏はどのような思いで教壇に立っているのか? (JBpress) 韓国の仁川国際空港からラスベガスに向けて出発するTWICE (韓光勲:ライター、社会学研究者) 「先生、写真撮るからピースして」 僕が教えている大学での韓国語の授業中、学生から急にそう言われた。訳も分からずピースをしているところを撮られた。 学生に聞くと、10代に人気のSNS「BeReal.」(ビーリアル)に投稿するそうだ。BeReal.とは、通知が来てから2分以内に写真を投稿するSNSである。 学生たちは一斉にスマホを開き、思い思いの写真を撮っていた。通知は基本的に1日に1回しか来ないらしく、写真を撮らないと他の人の投稿も見れないとのこと。学生には「それは大事だね。いくらでも写真撮っていいよ」と伝えた。ある学生は「先生、優しすぎ!」とはしゃいで写真を撮っていた。 2024年4月から、大学の非常勤講師として週に2コマ、大学1年生と2年生に「初級韓国語」と「中級韓国語」を教えている。1コマは100分だ。1クラスあたり15人ほどで、受講生はみな女子学生である。
冒頭の言葉のように、学生たちはタメ口で話してくるし、感情をストレートにぶつけてくる。他の講師に比べたら学生たちと年齢が近いので、高校の先生に対するような感覚なのだろう。タメ口は全然オッケーだ。ただ、退屈な時は本当に退屈そうにされるので、変な汗をかく。なんとか学生を退屈させないように、手を変え品を変え、K-POPにまつわる雑談や時事ネタを合間に挟みながら、学生の注意を引こうと奮闘している。 学生が良い反応を示してくれる時は素直に嬉しい。やりがいを感じる。授業自体は楽しく教えている。「韓国語を学びたい」と大学にやってきた学生に教えるのは幸せなことだ。自分の持っている知識を存分に伝えたいと思っているし、教えているこちらが学ぶことも多い。こちらが韓国語の綴りを少しでも間違えようものなら鋭く指摘されるので、授業中は全く気が抜けない。 ■ 「“推し”の言ってることを理解したい」 初回の授業では、自己紹介とともに、「なぜ韓国語を勉強しようと思ったのか」を学生一人一人に話してもらった。驚いたのは、受講生ほぼ全員が「K-POP」を理由として挙げたことだ。誰かしらの「推し」がいて、「推しの言ってることを理解したい」というのが受講の主な理由なのだ。K-POPアイドルの影響力を思い知らされた。 大学1、2年生は2000年代中盤に生まれている。日韓で人気のK-POPガールズグループ「TWICE」(トゥワイス)が登場したのは小学校高学年のときである。僕が「TWICEが好きだ」と話すと、ある学生は「小学生の時にTWICEの曲に合わせてよく踊っていた」と話してくれた。 つまり、小学生の頃からK-POPが身近にある世代ということだ。TWICEやBTSなどが活躍した「第3次韓流ブーム」が直撃した世代である。彼女たちにとっては「推し」が話す韓国語を学ぶのは自然な選択だったのだろう。