韓国語講師として大学の教壇に、学生たちに聞いた「心の底から韓国語を学びたい」理由
だが、韓国語を学ぶ高校生や大学生が増えているということは、一義的には、韓国や朝鮮半島の文化を理解する人、理解できる素地を持つ若者が増えることを意味する。これは日韓関係にとってはポジティブなことだと思う。だから、僕は日韓関係の未来を楽観的に考えている。市民同士の交流が摩擦を生むことは確かにあるが、これだけ言語を学ぶ人が増えているという現象は、ポジティブに捉えていいだろう。 韓国語を学ぶ高校生・大学生にとっては、韓国は「憧れ」の対象ですらある。カッコいい音楽を奏で、キレのあるダンスを踊り、愛嬌のある振る舞いをする「憧れ」のK-POPアイドルが話す言語。できれば通訳越しにではなく、アイドルの話す言葉を直接理解したい。そういう切実な思いが韓国語学習のモチベーションになっているようだ。 ■ 文化を楽しむために歴史の知識は必要 最近、学生にアンケートを取ってみた。「韓国語という言語そのもの以外に、授業ではどういうことを知りたいですか。K-POP以外では、どういうことに興味がありますか」。答えは様々だった。代表的なものを紹介してみよう。 まず、美容やメイク、コスメ、ファッションに関心のある学生は多いようだった。お菓子やスイーツ、食文化と答えた学生もいた。女子学生ばかりなので、このあたりはやはり関心が高いのだろう。 「日本と韓国の違うところ」、あるいは「韓国人のリアル」や家庭事情など、文化・風習について知りたい学生も多かった。韓国文化についても関心が高いのだ。 ドラマや映画、本について知りたい学生もそれなりにいた。僕のオススメをこれから紹介してあげようと思う。
それに対して、「歴史」と答えた学生は一人だった。ひと昔前、1992年生まれの僕よりも一つ前の世代ならば、韓国語を学ぶのは歴史に関心のある学生が多かったはずだ。このあたりは時代の流れなのだろう。現在はK-POPや韓国ドラマ・映画がきっかけで学ぶ人が圧倒的多数なので、むしろ自然である。 とはいえ、文化を楽しむためには歴史の知識は必要になる。大事なことは少しずつ伝えていこうと思っている。例えば、最近の授業では「6月25日はなんの日か知っていますか」と学生に聞いた。誰も答えられなかったので、ニュース映像を見せたうえで、「この日は朝鮮戦争が始まった日なのです。韓国ではこの日付は誰でも知っています。大切な日なので覚えておいてください」と伝えた。 ■ 韓国と出会い始めた学生たち 最後に、僕がどういう気持ちで韓国語を教えているのか、少し面映ゆいが、書き残しておこう。 日本生まれ、日本育ちの僕は、韓国語を学んだおかげで、自分の世界が広がった。小さい頃から面白い韓国映画をたくさん見てきたことは貴重な財産だ。K-POPが大好きなのは何度も書いてきた通り。これらはライターとしての仕事、大学院での研究にも繋がっている。韓国留学を通じて、韓国人の友人が何人もできた。韓国語との出会いがなければ、今の自分は全く違ったものになっていただろう。 韓国語を学び始めた学生たちはいま、まさに韓国と出会い始めたのである。その出会いが良いものであることを僕は願っている。韓国語を学ぶことを通じて、自分の世界を広げていってほしい。そのためであれば惜しみなく手助けをしたい。そう思って、僕は教壇に立っている。
韓光勲