3メガ銀への株主提案でISSが賛成推奨、取締役会の監督能力に照準
(ブルームバーグ): オーストラリアの非政府組織(NGO)マーケット・フォースなどの環境団体が日本の3メガバンクグループに対して行った気候変動関連の株主提案で、米議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が賛成を推奨していることが分かった。
株主提案は、気候変動関連の事業リスクや事業機会の管理が経営戦略に確実に組み込まれるよう、取締役会が適切な監督能力を備えているかについて株主が評価する上で必要な情報を開示するよう求めるものだ。
金融機関にこうした株主提案が集まりやすいのは、融資などの資金供給を通じて広く取引先企業の環境戦略にも影響を与え得るからだ。脱炭素を進める上で金融機関の取り組みが欠かせないことの裏返しでもある。
三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ3社全てを対象にした株主提案は2年連続となった。3社はいずれも取締役会の意見として提案に反対を表明している。
ISSはリポートで、社外取締役の選任や取締役会の評価において、気候変動のリスクと機会がどのように考慮されているか情報を開示することは、各社の株主にとって「価値がある」と指摘。3社への提案全てに賛成を推奨した。
気候変動を巡る国内金融機関への株主提案は2020年からみられる。マーケット・フォースなどはこれまで、50年の二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロ目標を踏まえた移行計画の策定が必要と指摘していたが、今年からは取締役会の在り方に狙いを定める方針に変えた。
ISSが賛成推奨する一方、同じ米議決権行使助言会社のグラスルイスは「取締役会は一般的に、その時々の会社のニーズに照らして、取締役に最も望ましい資質や特性を決定して推奨する最良の立場にある」とし、3社への提案全てに反対するよう助言した。
全国銀行協会の福留朗裕会長(三井住友銀行頭取)は13日の記者会見で「銀行界は気候変動対応を最重要課題の一つとして位置付け、各ステークホルダーと密に連携して取り組んでいる。環境NGOなどの市民社会の声に対しても真摯(しんし)に耳を傾けている」と話した。