『盟友』との接戦を制し天皇杯6強入り、川崎のニック・ファジーカス「感情は抜きにして、いかに勝つのかという試合でした」
辻のセレブレーションを披露「長年、彼を見てきた自分が真似をして見せることができてよかった」
コート上での活躍ぶりを見るとにかわに信じがたい気持ちにもなるが、ファジーカスの引退の時はどんどん近づいている。そのため、対峙する選手やスタッフ、そしてファンはコートに立っている姿を目に焼き付けようとファジーカスに視線を送るだろう。 川崎に入団した2012年から9シーズンプレーし、プライベートでもファジーカスと親交が深い群馬の辻直人にはどんな思いがあっただろうか。すでにレギュラーシーズンでの対戦は終え、もしチャンピオンシップでの対戦がなければ、公式戦での対戦は今回が最後だ。 「そういうこと考えずにチャンピオンシップでの対戦もチャンスがあると思って、天皇杯の一戦に過ぎないと自分に言い聞かせて臨みました」と、辻は大きく意識しなかったという。 同様にファジーカスも「今日は感情は抜きにして、いかに勝つのかという試合でした。後から振り返って、あれが(辻との)最後の試合だったと思うことはあるかもしれませんが、相手のことを考えている余裕はなかったです」と話した。 特別意識しなかったと話す2人だが、絆の深さが表れる場面が試合中にあった。第2クォーター中盤、辻が3ポイントシュートを外した直後に、ファジーカスがトップの位置から3ポイントシュートを決めて、辻が3ポイントシュートを決めた際に行うセレブレーションを真似した。会場のビジョンにその姿が映し出されると、ドッと歓声が湧き上がった。 その場面をファジーカスは振り返る。「試合前にヒースと、チャンスがあったらやってみようという話をしていて、3ポイントシュートが入った後にボールがデッドになったのでやりました。あれはリスペクトの気持ちしかありません。長年、彼を見てきた自分が真似している所を見せることができてよかったと思っています。彼が苦笑いしているのが面白かったです」 それを見た辻は「めちゃくちゃ嫌な気持ちになりました」と満面の笑みで答え「僕が外して、彼が決めるというのが特に…」と苦笑いが続いた。さらにこの試合、勝負どころで活躍した同期の長谷川も含めた古巣の選手に対して「敵のようで敵でない。言い表しにくい存在です。(ファジーカスのような年上の選手が活躍すると)まだまだ自分もやれるんだと励みになります」と特別な存在であることを話した。 既報の通り、試合翌日にSNS投票でファジーカスのオールスターゲームへの選出が発表された。X上でファジーカスへの投票の音頭をとっていた辻は「(もしファジーカスが選ばれるなら)なんなら同じチームにしてくれないかな。どないかして」と冗談混じりに話した。オールスターでの和気あいあいとした『ツジーカス』が見られる喜びとともに、2人の対戦を再びチャンピオンシップで見られることを期待したい。