「毒母のせいで私は子どもを諦めた」自分の人生を選べなかった40代娘の恨みと苦悩【しんどい母の手放し方・第3回】
人気カウンセラー・根本裕幸さんの連載、テーマは「しんどい母親の手放し方」。いよいよ毒母持ちライター・M子へのカウンセリングが始まります。てっきり母親への不満を吐き出していくのかと思いきや、M子自身のこれまでの人生を振り返る内容に。どんな時に母が浮かび、どんなことにしんどさを感じるか、じっくり聞いていきます。
母のせいで、母になることが怖くなった
根本 ではここからはカウンセリングということで、改めてうかがいます。M子さんはお母さんに対して、どんなことで悩まれていますか。 M子 そうですね、母親との今後というか、ちょうどいい付き合い方を知りたいです。子どもの頃からずっと母親が苦手なんですけど、最近はもうこれ以上憎みたくないというか、いろいろ母親のせいにするのもいい加減疲れたな、という気持ちがあって。 根本 憎いとか、母親のせいだという気持ちは普段どういうところで出てきますか? M子 何かをうまくできなかった時、ですかね。たとえば、私は家族や友人に対して思ったことをその場で言えない時があるんです。モヤモヤしてもつい黙ってしまって、後になって自分がちゃんと言うべきだったと気付く。そういう自分の悪いクセが出た時に「これも全部あの人のせいだ」って思っちゃうんです。 あと私は短大卒で、もっとちゃんと勉強して四大に行っておけばよかったなと今さら後悔しているんですが、それも母親のせいと思っています。母は、私が学校でどんなにいい成績を取っても褒めることはなかったんです。それどころか心が折れるようなことを言ってくる時もあって、高校受験あたりから勉強を頑張れなくなって。褒めてもらえなくても自分のために頑張ればいいじゃないかって、その時思えればよかったんですけど。 そういう記憶がどうしても残っていて、自分の人生の後悔を全部母のせいにしているところがあります。あの時あんなふうに言われていなければ、私はもうちょっと頑張れたんじゃないかなって。 根本 後悔していることはほかにもあったりしますか? M子 今一番感じているのは、子どもを持たなかったことですね。10代の頃から自分もいつかは子どもがほしいと思っていたし、20代まではむしろ「私はあんな母親にはならない!」と、母に対抗心すら持っていました。でも30代くらいになると、自分が母に似ているというか、すごく影響を受けて育っていることも分かるようになってきて。 根本 なるほど。 M子 そうしたら、子どもを持つことが怖くなっちゃったんです。私もあの人と同じことをするんじゃないのか、そもそも実の母親とこんなに分かり合えない人間が、母親になって大丈夫なのかって。だったらもう、すでにいる姪っ子や友人の子どもを可愛がるほうがお互い幸せというか、誰も傷つかずに済むんじゃないかと。 私は今40代で、年齢的なリミットが近付いてきたことで、“子どもがほしい”という気持ちにはだんだんと整理がついてきました。ただ、母との関係を理由に、自分の気持ちに蓋をしたままここまできてしまったことには後悔があります。まだ間に合う年齢のうちにきちんと向き合わなかったのは自分ですし、その選択を自分で納得できていればいいんですけど、結局まだ「私はあの人のせいで子どもを諦めた」と、母を恨む気持ちが強いんですよね。
根本 裕幸