インフレで本当に苦しんでいる国民はどこか? 日本はなんと「インフレ収束しない」1位
日本では円安もあり、昨今の物価高に驚いている人も多いだろう。マクロ経済指標的にはインフレ圧力は和らぎ、各国中央銀行による金利引き下げの動きが出始めている。しかし、人々が実感できる物価高の緩和には1年以上かかる可能性もある。各国の人々はどのような経済センチメントを抱いているのか。収入水準や家賃水準などを参考にしながら、各国の物価高状況を俯瞰してみたい。 【詳細な図や写真】自国経済が景気後退にあるかどうか? という質問で日本は38カ国平均を上回った(出典:Ipsos「Cost of Living Monitor」(2024年5月))
物価高の収束への期待感、「二度と収束しない」との回答も
いま米連邦準備制度理事会(FRB)がいつ金利引き下げに動くのかに注目が集まっている。一方、欧州ではECBがすでに2019年以来初となる金利引下げを発表、インフレ圧力は緩和され始めているとの見方が趨勢となっている。 それでも消費者が実感できる状態にはなっておらず、実感できる水準まで物価が下がるのは、1年後になる可能性も指摘されている。グローバルの市場調査会社Ipsosが2024年5月に発表した最新の消費者センチメント調査で、この状況が浮き彫りとなった。 Ipsosの「Cost of Living Monitor」(2024年5月)によると、調査対象32カ国のうち、29カ国でインフレが「ノーマルな状態」に戻るのは1年以上先、あるいは二度と戻らないと考える人が多数を占めたことが判明した。 国別に見ると、日本、フランス、トルコ、ベルギー、オランダの5カ国で、インフレが収束するのは「1年以上先」あるいは「二度と収束しない」と考える人の割合は70%以上となった。特に、日本では「二度と収束しない」との回答割合が44%と32カ国中トップ、平均21%の2倍以上と、インフレからの回復期待が薄いことが分かった。 自国経済が景気後退にあるかどうかという質問でも、日本では51%が景気後退にあると回答、平均の45%を超えた。ただし、この設問では、韓国では76%が景気後退にあると回答したほか、トルコで75%、ハンガリー72%、マレーシア68%、ニュージーランド68%、タイ66%、スウェーデン64%、アルゼンチン58%などと、日本よりも景況感が悪い国が複数存在することが確認できる。 同レポートでは、実際にインフレや景気後退でどれほど生活が苦しくなっているのか、という点にも焦点が当てられている。 「生活に余裕がある」「まあまあやっていける」と答えた人の割合は、32カ国平均で39%。この割合が最も高かったのは中国で71%だった。これにインド64%、オランダ62%、スウェーデン61%、イスラエル54%、英国48%が続いた。一方「生活が苦しい」「非常に苦しい」と答えた人の割合は32カ国平均で26%だった。国別では、アルゼンチンが56%で最多となり、これにチリ51%、ペルー47%、トルコ43%、コロンビア42%、メキシコ36%など中南米諸国で、生活苦を訴える人が多い傾向が顕著だった。