消えゆく屋外展示 ガラスの街・富山市 14基撤去、屋内に転換
●紫外線、車の振動ネック 富山市中心部で屋外展示されてきたガラス作品が姿を消している。「ガラスの街」を掲げる市の象徴的な事業として20年前から行われてきたが、紫外線や車の振動などにさらされる屋外環境は展示に適していないとしてショーケースの撤去が進み、もともとあった15基のうち14基の撤去が今月末までに完了する見通しだ。市は取り組みを転換し、商業施設など屋内での展示の充実に力を入れる。 【写真】市が新たに設置した作品展示のケース=富山市内の商業施設 市はガラスの薬瓶の製造が盛んだった歴史にちなみ、ガラスをテーマにしたまちづくりに取り組んでいる。市町村合併前の2004年度から、屋外ショーケースを市役所周辺や城址大通りなどに順次設置し、国内外の作家の作品を幅広く展示してきた。 ただ、ケースの老朽化に伴い虫やほこりが入るようになり、展示環境が悪化。紫外線や温度変化なども作品の劣化につながる恐れがあり、市は企業からの寄付で設置された1基を除く14基を、21年度から年3~4基ずつ撤去してきた。 ●地震で破損も 14基のうち残りは富山城址公園前に設置された高さ2・6メートル、幅1・1メートル、奥行き1メートルの3基で、市は月内に撤去を予定する。能登半島地震で展示していた作品1点が破損し、余震を警戒して他の2点も展示を取りやめたため、ケースは既に空になっている。 屋外展示の開始当時はガラス作品を鑑賞できる場が限られたが、15年度に市ガラス美術館が開館したこともあり、市は展示方法を見直した。市によると、ケースは1基あたり約500万円かけて整備された。 市は屋外展示に代わる試みとして、3月から富山駅前の商業施設「マルート」と駅北のオーバード・ホール中ホールに高さ1・6メートル、幅60センチ、奥行き70センチほどのケースを1基ずつ設置した。県内を拠点とするなど地元ゆかりの作家の作品を展示し、ケースのQRコードから作家の他の作品も見られる仕組みとした。 今年度はケースを2基増やす予定で、ホテルなど他の民間施設にも展示を広げたい考えだ。作品の紹介や販売につなげ、作家の活動を後押しする。市の担当者は、屋外展示が果たしてきた役割は大きいとした上で「今後は作品にも優しい展示で、ガラスの街を盛り上げていきたい」と話した。