豊田章男氏の「全方位戦略」とは真逆の道を行っている…"中国依存"をやめられないテスラを待ち受ける試練
■世界最大の中国市場で盛り返している 10月23日、米テスラは7~9月期の決算を発表した。それによると、同社の売上高は前年同期比8%増の251億8200万ドル(約3兆8000億円)、最終利益は17%増の21億6700万ドル(約3300億円)だった。増益は3四半期ぶりだ。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は強気な事業見通しを示し、翌24日、同社株は22%上昇した。 【この記事の画像を見る】 今回、同社の増収・増益を支えた主な要因は、政府の補助金でEV販売が好調な中国市場で販売が好調だったことだ。熾烈な競争に合わせて価格を引き下げたことが奏功し、売り上げを伸ばした。EVの製造コストカットに加え、中国政府によるEV、PHVなど“新エネルギー車”購入補助金がテスラの収益を支えた。米欧などでEVの販売は業界全体として苦戦する中で、テスラは世界最大の中国市場で善戦した。 中国政府の販売補助金がある間、テスラが中国市場で相応の収益を上げることは可能だろう。ただ、現在のように中国に依存したまま、収益の拡大を続けることができるかには不透明要素もありそうだ。BYDなどコストが低い中国の企業と比較すると、米国企業であるテスラは中国政府の政策の影響を受けやすいはずだ。 ■日本車メーカーのような「全方位型」へシフト 同社が、競争激化でレッドオーシャン化が鮮明な中国市場中心に世界展開を進め、安定的な事業展開のビジネスモデルを構築できるか、イーロン・マスクCEOの手腕が問われるだろう。 テスラは決算説明資料に、過去12カ月間の米国とカナダ、欧州、中国市場における推定シェアの推移を掲載している。同社は国地域別の販売実績を公表していないが、このグラフから大まかな地域別の収益状況がわかる。 7~9月期、テスラの増収増益を支えたのは中国事業だった。過去1年間程度のシェアは、米国とカナダ、欧州で低下した。それは米欧の大手自動車メーカーのEVシフトの躓(つまず)きと整合する。フォルクスワーゲンやGM、フォードなどは、全方位型(エンジン車、HV、PHV、EV、燃料電池車など多種多様なラインナップを取り揃える戦略)への修正を余儀なくされた。