脚本家・坂元裕二 映画『怪物』は“気づかず加害者になった”運転経験から着想 脚本に込めた思いを語る
日テレNEWS
映画『怪物』(6月2日全国公開)で、第76回カンヌ国際映画祭の脚本賞に輝いた坂元裕二さんが29日、是枝裕和監督(60)と共に『がい旋記者会見』に出席。帰国後初の公の場で、脚本の構想について語りました。 【画像】『東京ラブストーリー』や『Mother』… 坂元裕二作品を振り返る
■「きっとどこかにいる孤独な誰か」を頭に描いた今作
映画は、息子を愛するシングルマザーと、生徒思いの学校教師、無邪気な子どもたちの3つの視点から描かれ、よくある子ども同士のケンカに見えた出来事が、それぞれの食い違う主張によって社会やメディアを巻き込み大ごととなっていく物語。“怪物”は誰なのかを問いかけるヒューマンドラマです。 坂元さんは執筆について「きっとどこかにいるであろう、孤独に過ごしている誰か。特別な誰かを指しているわけではなく、たくさんの人に届けるという意味でもなく、この映画を受け止めてくれる人がいると信じて、その人のことを頭に描きながら常に書いていました」と明かしました。
■脚本の着想は自身の経験から「自分が加害者だと気づくことはとても難しい」
また脚本は、自身の経験がきっかけになっていると明かした坂元さん。 「車を運転中、赤信号で待っていました。前にトラックが止まっていて、青になったんですが、そのトラックがなかなか動き出さない。よそ見をしているのかなと思って、クラクションを鳴らしたけど、それでもトラックが動かなかった。ようやく動き出した後に、横断歩道に車いすの方がいて、トラックはその車いすの方が渡りきるのを待っていたんですが、トラックの後ろにいた私には見えなかった。それ以来自分がクラクションを鳴らしてしまったことを後悔し続けていて、世の中には普段生活していて、見えないことがある。私自身、自分が被害者だと思うことにはとても敏感ですが、自分が加害者だと気づくことはとても難しい。それをどうすれば加害者が被害者に対して、していることを気づくことができるだろうか。そのことを常に10年あまり考え続けてきて、その1つの描き方として、3つの視点で描くこの方法を選びました」と脚本に込めた思いを語りました。 自身も脚本家という肩書を持つ是枝監督は「最初にプロット(筋書き)をいただいた時から、いったい何が起きているのか分からないのに、読むのが止められない。映画が半分過ぎてもまだ分からない、というのが自分にはない物語の語り方で、読んでいた自分が作品によって批評されていく。坂元さんの話で言うと、クラクションを鳴らす側にいや応なくなってしまうっていう。ある種いい意味での、居心地の悪さが最後まで持続することがとても面白かったです。そこが一番チャレンジしがいのある脚本だなと思いました」と今回の坂元さんの脚本についてコメントしました。