元日SPでも屈指の傑作になった3つのポイントとは?『相棒』では珍しい構成も?『相棒 season23』第9話考察レビュー
ゲスト出演・高嶋政伸の演技の凄み
2つ目の見どころは、高嶋政伸が演じた桧山弘一の人間臭さだ。 桧山は国民的ニュースキャスターとして正義を持って熱く世間に訴えかけて支持を得る一方で、警備員の名前を覚えてフレンドリーに接するまさに好漢と呼ぶべき人物だ。 しかし実は桧山は経歴詐称をしており、更に裏では不倫もし、おまけに伊地知による性被害事件を知るもそれを告発せずそれを脅しの道具として利用してしまった。 とはいえ、人々に明るい良いニュースを届けたいという想いは真実。娘を守る為に自らの地位を全て犠牲にする優しさも持っていた。 どうしようもない男ではあるが手法こそ間違っていても正義感は間違いなく、下請けの人々にも優しかったりするのは打算などもない素の人格でもあった。 地位も名誉も失った桧山だが娘を守り妻も帰ってきた事だけは唯一の救いと言っても過言ではない。 また桧山を演じた高嶋の迷い悩み追い詰められる表情は芝居と分かっていても鬼気迫るものがあり、最後に視聴者に語りかける場面も表情や声色を巧みに変化させて、キャラクターの真摯な一面を雄弁に伝えていた。 桧山が極悪人に見えなかったのは、高嶋の熱演の賜物だろう。
いつものレギュラー陣が全員活躍
3つ目の見どころは、レギュラー陣全員の活躍が漏れなく、無理なく描かれた点にある。 亀山は右京さながらの推理を見せ、伊丹もそれに追従。益子は鑑識スキルで爆弾の隠し場所を全て発見した。芹沢は伊丹不在時の捜査の指揮を取り、課長とも連携をしてみせる。 また、社は内調の情報から真犯人に気が付き、それを知った峯秋は特命係へ共有。陣川は桧山の妻を怪しむ警察官としての成長を見せながら、真犯人へと繋がる鍵を失恋という彼らしい方法で見つけ出した。 さらに、出雲は過去に付けられた銃痕から自分が恋愛に自信を持てないので、幸せになろうとしてる妊婦を全身全霊で支えた。おまけに衣笠は自身の権力の維持の為に全て明らかにされた伊地知を切り捨ててみせた。 もちろん今回も右京の推理は冴え渡っていたが、それ以上に桧山や伊地知の目論見の甘い正義を切って捨てるなど、何があってもブレない”絶対的に正義”を体現して、観る者を魅了した。 また、それ以外にも細かい点として、孫に好かれたい内村部長と中園参事官、娘に彼氏ができて心配する社、警察学校時代に恋していた澤田(旧姓:北村)に会って少しはしゃぐ伊丹とそれに気付く益子と気付かない亀山、相棒にプレゼントを渡して照れる右京…などなど元日SPだからこそ垣間見える、特命係の面々のプライベートな一面にも終始ニヤニヤさせられた。 これまでの元日SPでも「バベルの塔」「ピエロ」のような傑作があったが、今回の「最後の一日」はそれらに匹敵する出来栄えであった。 【著者プロフィール:Naoki】 1995年生まれのエンタメ企業勤務。ドラマ、漫画、ゲームなどサブカルをこよなく愛するオタクライター。自身でも作品ファンを集めたオフ会を開いたり積極的にファンコミュニティを拡大させている。記事は知らない人には分かりやすく、知ってる人にはより楽しめるを信条に活動中。
Naoki