中国で”山P”に次ぐ人気! 日本企業も注目のクリエイター山下智博とは?
孤独から生まれた表現方法
それでも言葉の壁は厚く、食文化も違うことによる精神的な圧迫感はすごかった。孤独との闘いだった。 「最近でこそ色々なところでチヤホヤされることもありますが、最初のうちは地獄でしたね。引きこもってアニメばっかりみていました。話が伝わらないので、ひたすら一人で作業していました」。 その孤独からビニール製の人形との共同生活が始まった。中国版ニコニコ動画と言われる「ビリビリ動画」にアップされた人形との強烈なパフォーマンス動画は、瞬く間に中国の人々の心をつかんだ。一見すると心無い罵詈雑言(ばりぞうごん)も山下氏にとっては褒め言葉だ。 「ビリビリ動画は、2010年ぐらいから存在していると思いますが、そのサイトにはじめて登場したネイティブな日本人が僕だったんです。ボロカスに言われると思っていたのに、結構歓迎してくれて逆に恐縮してしまって……。政治と文化は関係ないんだなって実感できたんです。日本ではこんなにモテたことがなかったので、20代後半は彼らのために過ごそうって決めたんです。中国の若者が知りたい日本のことを発信していこうって思ったんです」 山下氏が発信する動画は、中国の若者を中心に非常に人気を博している。しかし最初からこういった形のモノ作りをめざしていたわけではなかった。 「日本にいるときはモノ作りって、大衆向けじゃなくわかる人に届けばいいっていう気持ちが強かったんです。自分の感性が一般的じゃないという自己顕示欲ですよね。でも中国のネット社会にはまだメインとなるものがなかったんです。その中でサブ的なものをやっても成立しない。だから王道というかメインのカルチャーを発信しようと思ったんです。今までしていたような点への発信ではなく、マスに伝えることをしようとしました」
インターネットの検閲は意外とゆるい!?
企業も山下氏の行動に注目している。札幌市を拠点にしているサツドラは、彼を起用したミニドラマを制作し、中国のネットメディアで配信するという試みを打ち出した。すでに山下氏が中国で配信している日本情報を紹介するシリーズ「紳士の大体1分間」の番外編として、ネットドラマ『紳士の1分間劇場~札幌編~』を3月末から中国国内で公開している。 「最近日本の企業さんと一緒にやらせていただく機会が増えていますね。日本の情報を中国に伝えたいと思っていても実は方法が非常に限られているんです。基本的のテレビや新聞などのマスメディアが日本の文化方面のニュースは積極的に流さないですから」。 そんな時、インターネットが威力を発揮する。勿論ネットの世界だからといって好き放題にできることではないようだが、日本人が思っているより自由度は高いらしい。 「動画を始めたとき、一番心配していたのはどのタイミングで上からの指導が入るんだろうということ。いつ神の声が聞こえてくるのかな……って思ったのですが、全然そんなことないんですよ。(国家主席の)習近平さんの発言を聞いていても、民間の交流はどんどんしていくべきだという意見なので、そういう空気は肌感覚でわかります」