深澤辰哉、繊細な“感情表現”で視聴者を魅了 『わたしの宝物』で放つ俳優としての存在感
単純な泥沼不倫ではなく、心のすれ違いから生まれる亀裂を描く『わたしの宝物』(フジテレビ系)では、一段落したと思った矢先、美羽(松本若菜)の日々を揺るがす不穏な空気が立ち込め始めている。 【写真】「こんなふっかさん見たことない…」深澤辰哉の“切ない”表情 本作は、夫・宏樹(田中圭)との窮屈な日々を暮らしていた美羽が、中学時代の友人・冬月稜(深澤辰哉)と再会し、自分の心の中の“宝物”を思い出す印象的なシーンから始まった。そんな中、美羽は念願の子供を授かるが、冬月との間にできた命であることが発覚。それでも自分の“宝物”を守るため、宏樹との子供だと嘘をつき、円満な家庭を築こうとする、その切なさと罪悪感が入り混じる心の機微が話題を呼んでいる。 宏樹の職場での葛藤や、宏樹と美羽の息苦しい空気を一気に清めてくれる稜の存在に、最初は救われた人も多いのではないだろうか。一方で今、宏樹と穏やかな日々を送っていた美羽の元に舞い戻った稜は、なぜか心をざわつかせてくる。 稜は初対面で距離を縮めて来る人懐っこいタイプで、美羽とくだらないことをずっと話し続けられる関係だ。泣きたいときは一緒に泣いてくれる宏樹とは異なり、泣きたいときは一緒に笑いも提供してくれる人。第1話でアフリカでの事故で亡くなったと思われていた稜だったが、生きていることが明らかになってほっと胸をなでおろした。 その事故で同僚を亡くした稜は、自分が生き残ったことへの責任を抱えながら、仕事に励む。美羽とも再会するが、宏樹と娘・栞と新たな一歩を踏み出した彼女と一緒になることは不可能だった。 一筋縄ではいかない複雑な感情が渦巻きながらも、笑顔で美羽を包み込む稜のキャラクター像を体現している深澤辰哉には、自然と目を奪われてしまう。三竿玲子プロデューサーも、「『春になったら』(カンテレ・フジテレビ系)など深澤さんのお芝居は観させていただいていたのですが、とても距離感がいい。出過ぎず、引きすぎず。役の立ち位置をつかむのがとてもお上手」と語る通り(※1)、作品を観ている視聴者の心に溶け込む能力がある俳優であると言える。 三竿プロデューサーが例に出した『春になったら』で深澤は、ヒロイン・瞳(奈緒)の大学の同級生・圭吾を好演。瞳に思いを寄せているが、彼女の父親(木梨憲武)の余命が3カ月、そして彼女も3カ月後に結婚することを知り、瞳の大変な時期を支える役柄を演じ切った。圭吾は瞳が困っていれば駆けつけるが、瞳に対してだけでなく全ての人に優しいという性格が伝わる。瞳の状況と自分の立場を考えられて、押し引きの加減をよく理解している人であり、それが深澤自身の印象ともマッチした。