3打席連続本塁打記録を持つ“伝説の人“阪神LT掛布雅之氏は史上初の球宴中止に何を思う…「寂しいが仕方ない」
その翌年、掛布氏は球宴初出場を果たすが、当時の打撃コーチで球宴MVPを3度獲得していた山内一弘氏に「オールスターとは何か?」を遠征先の旅館で1時間説かれたという。 「ようするに山内さんの球宴の自慢話だったが(笑)『自分から大先輩に話しに行け』と。最初は、右を見ても左を見ても凄い人ばかりで緊張して練習もできなかった。それが出場を重ねていくと自分の球界における立ち位置が変わっていくんだよね。自信と共に、この人たちに勝っていかなければならないという使命感を覚えたのがオールスターだった」 王貞治氏には「どこであんな技術を覚えたんだい?」と、本塁打ではなく、三遊間に流し打ったヒットを絶賛され「王さんが見てくれているんだ」と感激した。 忘れられないのは、あの3打席連続本塁打ではなく1981年の球宴だという。 全セの監督は前年V2を果たしていた広島の古葉竹識氏で、掛布氏は3試合すべてに「3番・三塁」でスタメン起用された。実は、この年、巨人の原辰徳がスーパールーキーとして活躍、三塁手としてファン投票1位で選出されていた。 また三塁には広島から衣笠氏が監督推薦で選ばれていた。掛布氏は、古葉氏に「僕に気を使わずに三塁では辰を使って下さい」と進言した。 だが、古葉氏は、「セリーグの三塁の顔は掛だから」と、掛布氏を三塁で、原氏を「1番・ショート」で起用した。 「嬉しかったし応えたいと思った。その気持ちが横浜でのサヨナラ本塁打になったのかも」。掛布氏は横浜スタジアムで行われた第2戦の延長10回にサヨナラ3ランを放ち、MVPを獲得している。ちなみに掛布氏は、通算349本塁打を放っているが、サヨナラ本塁打は、公式にはカウントされない、この1本のみである。 さて肝心の3打席連続本塁打については、「本塁打は1本も狙っていなかった。3本目は山口高志さん(阪急)のカーブに崩され、片手で打ったというより反応した。3番が僕で4番が王さん。だからホームで王さんが出迎えてくれた。ベンチでは長嶋さんが全セの監督として迎えてくれる。もう一度、出迎えてもらいたい。その気持ちはあったけどね」という。