U-23日本代表、パリ五輪へ進化か混乱か? OAと欧州組招集…成否を分ける「眼が揃うか」問題【コラム】
短期間でいかに最もハイレベルな選手との間にあるギャップを埋めるか
選手の力量が接近していると、プレーのタイミングを合わせやすい。アイデアも共有しやすい。いわゆる「眼が揃っている」状態になる。短期間でチームをまとめるにはこちらのほうがむしろ有利で、今回のU-23アジアカップのような過密日程では選手の入れ替えが不可欠だから、なおさら誰がプレーしても一定水準でまとまりも良いというのはけっこうなアドバンテージだった。 図抜けた武器がないので攻撃はやや物足りないところもあったが、セットプレーがいいので試合の流れとは無関係にチャンスを作れた。山田楓喜、山本理仁、荒木遼太郎と精度の高いキッカーがいて、木村誠二と高木幸大のセンターバックコンビが上がってくるコーナーキック、フリーキックは確実にチャンスになり得点もしている。流れのなかでも、シンプルなクロスボールからセットプレー的な形を作れた。 手堅い守備、パスワークの同調性、セットプレーがあり、メンバーを入れ替えても同じことができる。他国との大差はないが僅差はあり、日本はどの試合もほぼ優勢だったが接戦にはなりやすい。その接戦を制するために特化したようなチームだった気がする。 ただ、ここからはオーバーエイジ枠や23歳以下の欧州組も合流してくるだろう。そうなると眼が揃わなくなる。チームはまとまらなくなる。一時的に劣化するかもしれない。しかし、より強力な選手を加えないとチームは進化しないので必要な過程だ。短期間でいかに最もハイレベルな選手との間にあるギャップを埋めるか。そこで再び眼を揃えられれば、グレードアップしたチームとしてパリへ乗り込める。 [著者プロフィール] 西部謙司(にしべ・けんじ)/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。95年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、「サッカー日本代表戦術アナライズ」(カンゼン)、「戦術リストランテ」(ソル・メディア)など著書多数。
西部謙司 / Kenji Nishibe