【このニュースって何?】新しい紙幣が発行される → 紙幣にどうして価値があるの?
日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんがヒントを教えます。
お金の誕生
7月3日から新しい紙幣の発行が始まりました。1万円札は実業家の渋沢栄一、5千円札は教育者の津田梅子、1千円札は細菌学者の北里柴三郎の肖像が描かれています。紙幣が新しいデザインになるのは20年ぶりで、身近な大ニュースになっています。 わたしたちは紙幣を財布に入れて持ち歩き、モノを買ったり、サービスを受けたりするときに相手に渡しています。当たり前になっている行動ですが、どうして紙切れにそんなに価値があるのでしょうか。今回は、お金の歴史を振り返りながら、紙幣の価値がどこからくるのかについて考えてみたいと思います。 人が生活するうえで必要なものはたくさんあります。自分ひとりの力でそれらを持つことは簡単ではありません。そのため、大昔の人は自分が持っている物を他人が持っている物と交換することで、自分が持っていない物を手に入れようとしました。物々交換です。 ただ、物々交換だと、自分が持っている物をほしがり、なおかつ自分がほしい物を持っている人を見つけなければなりません。それはむずかしいことです。誰もがほしがるもので、なおかつ価値が長く変わらない物があれば、交換する相手探しの苦労が減ります。昔の日本では、布、米、塩などがそうした物として使われました。お金の役割をするものが登場したのです。 こうした物にも欠点がありました。重かったりかさばったりして運ぶのに大変です。また、長い時間がたつと、品質が悪くなるため、使える期間や回数に限りがあります。 そこで登場したのが、金属です。金、銀、銅などの金属は昔から貴重で、人々がほしがるものでした。こうした金属を小さく加工したものは持ち運びしやすく、劣化することもあまりありません。お金の誕生です。 今から4千年くらい前の古代エジプトやメソポタミアですでに使われていたとされます。日本ではおもに銅でつくられた「富本銭(ふほんせん)」という貨幣が見つかっています。7世紀後半には使われていたと考えられ、日本最古の貨幣とされています。 また中国ではたから貝の貝がらが貨幣としてさかんに使われていた時期がありました。たから貝は美しい貝ですが、中国にはあまり生息しておらず、その貝がらは珍重されていました。貴重なうえに、持ち運びやすくて劣化しないため、貨幣に適していました。中国で貝がらが貨幣として使われていたことの名残を日本でもみつけることができます。お金にまつわる漢字として貨、財、買、賃、資などがありますが、いずれも貝が部首に使われています。