『鬼太郎誕生』に続いて『あの花が咲く~』がサプライズヒット 両作には共通点も……
12月第2週の動員ランキングは、ポール・キング監督の『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』がオープニング3日間で動員26万6800人、興収4億1700万円を記録して初登場1位を獲得。外国映画が首位となるのは9月公開の『ホーンテッドマンション』以来3ヶ月ぶり。ギリギリのタイミングで俳優組合のストライキが明けて、主演のティモシー・シャラメが初来日。精力的なプロモーションをおこなうことができたのも功を奏したかたちだ。 【写真】丸刈り姿の伊藤健太郎 2位に初登場したのは『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』。監督はCMディレクター出身の成田洋一。主演は福原遥と水上恒司。いずれも、監督作、主演作においてこれまで大きなヒット作があるわけではないので、予想外の健闘と言えるだろう。オープニング3日間の動員は24万6500人、興収は3億2200万円。早くも口コミで作品の認知が広がっていて、ウィークデイの興行も好調。ロングヒットとなる兆しもある。 ロングヒットといえば、順位こそ2位→4位→3位→3位と首位には一度も立っていないものの、『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は公開4週目にしてまたしても前週比を超えてきた。週末3日間の動員は16万6300人、興収は2億4900万円。公開から24日間の累計動員は81万人、累計興収は11億5000万円。同じ東映配給で翌週に公開された『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』をランキングで逆転して、まだまだ興収を積み上げていく見込みだ。 夏以降、大ヒット作品の連鎖が途絶え、一部の東宝配給作品以外はかなり深刻な停滞が続いていた2023年の国内興行だが、ようやく年末になってから東映のアニメーション作品、松竹のヒューマンドラマと、それぞれの「お家芸」でヒット作が生まれたのは明るいニュースだ。 それにしても、『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』にしろ『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』にしろ、さらには北米にヒットが飛び火した『ゴジラ-1.0』にしろ『君たちはどう生きるか』にしろ、今年は1940~50年代、つまり戦中・戦後を舞台にした作品が結果を出している。先週末は初登場6位と鈍い出足だったものの、作品の評判の高さから今後に期待できるアニメーション作品『窓ぎわのトットちゃん』をそこに加えることも可能かもしれない。興味深いのは、必ずしもそれらの観客の中心が年配層というわけではなく、とりわけ『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』は若年層の観客から支持されていること。そこには、世界中で戦火の絶えない不安定な時代が反映しているのだろうか。
宇野維正