<熊本地震>増え続けるこどもたちへの負担、小学校避難所にキッズルーム
「絵本を読みながら寝るか?」。熊本県西原村の後藤武志さん(30)は妻と、2歳、10か月のこどもと4人で1週間、車中泊を続けている。 日中は、河原小学校の避難所で過ごすが、夜は、懐中電灯を頼りに、真っ暗な田んぼの横に停めたバンに移動する。本震直後、一晩は避難所で過ごしたが、子どもたちが周辺の物音ですぐに目を覚ましたり、夜泣きなどで迷惑をかけたりするので、翌日からはマイカーに泊まることにしたという。 後部座席の背もたれを倒し、幅2メートル弱の空間に4人で並ぶ。こどもに少しでも空間をと、夫婦は横向きで寝る。慣れない「寝室」に、子どもたちは絵本を読んだり、おしゃべりをしたり、寝付くまでにしばらく時間がかかる。「でも、ほかに選択肢がないから」と、後藤さんはため息をついた。
増え続ける親やこどもたちへの負担
災害弱者と言えば、高齢者と幼い子どもが真っ先に思い浮かぶ。しかし、避難所を訪問する専門家による健康やメンタルケアの大半は、高齢者が対象で、それに比べ、親子や子どもたちへの対応や支援は驚くほど少ない。そんななか、続く余震、終わりが見えない避難生活を前に、親やこどもたちへの負担は日々、増え続けている。 「避難所を出ることにしました」。3人のこどもを抱える主婦(38)は、思いを振り切るように話した。 河原小に、夫と、小学生の長男と3歳、3か月の3きょうだいとともに避難。発達障害の長男は慣れない集団生活に戸惑い、3歳の長女は毎朝、「ママ、おうちに帰ろう」とぐずった。 3年前、小学校近くの高台に建てた自宅は、敷地が活断層に近かったため、地盤が揺らぎ、大きく傾いた。全壊扱いという。長男と長女は、変わり果てた自宅を見て、「おうちが壊れちゃった」と大泣きした。避難生活に踏ん切りをつけ、熊本県菊池市で友人が無料で貸してくれるアパートに移ることを決めた。 「優しい友人に囲まれ、救援物資も充実して、温かいご飯が食べられる避難所に、この村に残りたい。でも、子どもたちには早く安定した拠点が必要だと思い、そちらを優先することにしました」