日本政界の「闇将軍」田中角栄がもみ消した!? 国鉄民営化のウラに「隠された」誰も知らなかった衝撃の「秘密」
安倍元首相が国士と賞賛した葛西敬之が死の床についた。政界と密接に関わり、国鉄の民営化や晩年ではリニア事業の推進に心血を注ぎ、日本のインフラに貢献してきた。また、安倍を初めとする政治家たちと親交を深め、10年以上も中心となって日本を「事実上」動かしてきた。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 本連載では、類まれなる愛国者であった葛西敬之の生涯を振り返り、日本を裏で操ってきたフィクサーの知られざる素顔を『国商』(森功著)から一部抜粋して紹介する。 『国商』連載第11回 『<! --td {border: 1px solid #cccccc;}br {mso-data-placement:same-cell;}--> 内閣総理大臣の裏切り⁉...過去「最恐」の春闘を牽引した国労がハマった恐ろしすぎる「ワナ」』より続く
スト権ストつぶしの裏にあったロッキード事件
三木政権の自民党幹事長だった中曽根が、三木の容認した国鉄労働組合(国労)のスト権スト(※ストライキ権を獲得するためのストライキ)をつぶそうとしたのはなぜか。それはロッキード事件という一大政界汚職とも無関係ではないように感じる。事件に先立ち金権問題で内閣総辞職を余儀なくされた田中の後継首相がクリーンなイメージの三木武夫だ。 田中首相退陣から1年あまりのちの76年2月、米上院外交委員会でロッキード汚職が浮上した。三木は検察首脳に事件の捜査を指示した。すると、田中は「三木おろし」を仕掛けて反撃する。田中は自民党内の有力派閥をまとめあげ、大勢は圧倒的に有利に立ち、三木はむしろピンチに陥った。 このとき幹事長だった中曽根は、田中が党内に呼びかけた三木おろしに与していないが、危うい状況に立たされていた。実は中曽根自身が三木の追及してきたロッキード事件に深くかかわっていたのである。中曽根は右翼の巨魁、児玉誉士夫と懇意であり、ロッキードによる自衛隊の次期戦闘機納入への関与も取り沙汰されていた。
パワーバランスの崩壊が国労にもたらしたもの
ロッキード疑獄の渦中、米国務長官キッシンジャーと旧知の中曽根は、三木おろしに与する代わりに事件のもみ消しを図ろうと米政府に交渉している。キッシンジャーはロッキード汚職を米政府内で取りあげ、田中追及の急先鋒となった。事件の最大のキーパーソンだ。中曽根はキッシンジャーを頼った。 当時の米公文書に、中曽根が「HUSH UP(MOMIKESU)」と米政府に働きかけた言葉がそのまま記録されている事実が最近になって明らかになっている。米国への工作は事件がそれ以上広がらないようにする保身というほかない。のちに誕生する中曽根政権が「田中曽根内閣」と揶揄されるように、このとき中曽根は田中にすり寄っていたのである。 ロッキード汚職にまみれた田中角栄は、党内最大派閥を率いた闇将軍と異名をとり、国鉄をはじめとした運輸行政に絶大な力を振るい、長年運輸族議員の頂点に君臨してきた。国労にも太いパイプがあり、国労の後ろ盾にもなってきた。 奇しくも動労とともに国労が無謀なスト権ストに踏み切ったのは、ロッキード事件の浮上する3ヵ月前の75年11月のことだ。スト権ストに理解を示す現役首相の三木だけではなく、田中の力も借りることができる。国労はそう甘く考えたのだろう。 ところが、ロッキード事件が田中と三木、そして中曽根という三者のパワーバランスを破壊した。 闇将軍と呼ばれた田中もロッキード事件以降、さすがに権力にかげりが見え始めた。と同時に、国労は強力な後ろ盾を失い、結果的に国鉄改革の気運が高まっていく。事件が浮上した当初、米政府に事件の隠蔽工作を働きかけた中曽根は、やがて田中支配からの脱却を試みようとする。中曽根はそこに乗じて国鉄民営化の旗を振った。 『「間違いなく国の形を変えた」...国鉄の民営化に隠された知られざる衝撃の真実』へ続く
森 功(ジャーナリスト)