死ぬ場所探した次男 「生きていてごめん」 後藤誠子さん講演 不登校ひきこもりの親が幸せな理由㊥/兵庫・丹波市
友の言葉「宝物」 握り締めたこぶし
やがて1年たち、次男が東京から帰って来た。肉付きが良くなり、身なりもこざっぱりしていた。仕事や学校に行けと言われないので、良い状態で過ごしていたようだ。 ギター好きの次男の友人は、次男が東京から帰って来てからも、ご飯を食べに連れて行ったりしてくれた。ある時、その子に「いつもありがとうね」とお礼を言ったら、「俺があいつと一緒にいたいから、楽しいから誘っているんだ」と教えてくれた。仕事もできない次男に価値があると教えてくれた。「生きているだけで価値がある。一緒にいて楽しい友だちなんだ」―と。この言葉は宝物だ。 この友人と次男が出かけた翌日、次男は怒りでこぶしを握り締めていた。出先で友人の知り合いと一緒になったという。その知り合いが次男に、仕事のことなどを聞いたそうだ。次男は「何もしていない。家にいる」と正直に伝えたところ、「うらやましいな。俺もそんなご身分になりたいもんだ」と言ったそうだ。 そう言われた次男が怒った。「そんなにうらやましいならやってみろ。引きこもってみろ」と言いたかったそうだ。それまで私は、次男は甘えている、怠けていると思っていた。=続く=