能登半島地震で被災の輪島塗おわんを次代へ 廃棄から救い販売、支援者寄付100万円超
能登半島地震の被災者から譲り受けた輪島塗の漆器を各地で販売し、売り上げを寄付する「つなぐおわん」プロジェクトの輪が広がっている。損壊した住宅で救い出され、災害関連ごみとして廃棄寸前となったおわんだ。能登地方と山梨県の音楽仲間が発起人となり、被災地で復旧・復興に尽くす支援団体への寄付は計100万円を超えた。(共同通信=河野在基) 11月中旬、東京・赤坂の草月ホールで、江戸時代の加賀藩に料理人として仕えた人々の姿を描いた舞台「武士の献立」が上演された。劇中に登場した漆器はプロジェクトから購入。会場の一角には鮮やかな光沢の黒や朱のおわんが並び、観客が買い求める姿があった。 山梨県富士河口湖町に住むマリンバ奏者の影山朋子さん(42)が3月末、石川県中能登町のジャズギタリスト須藤雅彦さん(44)が主催する復興イベント出演のため能登を訪れた際、各家庭で使われた漆器が家屋や蔵の損壊で災害関連ごみとなっていることを耳にした。「漆器を生かすことができないか」との思いで活動が始まった。
廃棄依頼が届く被災地のシルバー人材センターや知人宅を須藤さんが訪ね、漆器を集めた。所有者と協力し、がれきの下から引っ張り出したおわんもある。現在は、プロジェクトに賛同する住民から提供の連絡が来るという。能登地方のフリースクールの子どもたちと漆器を洗浄し、磨き上げている。 4月以降に関東地方のイベントで販売をスタート。その後も東京や山梨の写真家らの協力を得て、金沢市や神戸市、大阪府、山梨県富士吉田市などで活動を広げてきた。 江戸中期から昭和初期に作られたおわんが多く、かつては祝いの席や法事で使われたという。売り上げは経費を除き、能登に寄り添う団体に寄付し、10月末までに計約106万円に上った。影山さんは「できることで関わり、おわんも第2の活躍の場を得る。この活動から能登についての会話も増えたらうれしい」と笑顔だった。