「僕の演劇にも通じる」かもめんたる・岩崎う大が愛する映画(1)喜怒哀楽からはみ出るユーモアが素晴らしい1本
各界で活躍する著名人に「人生に影響を与えた映画」をセレクトしてもらい、その魅力を語っていただくインタビュー企画。今回登場するのは、お笑いコンビ・かもめんたるの、岩崎う大さん。『劇団かもめんたる』の主催者でもあり、脚本家・放送作家としての顔も持つ、う大氏が、ゆったりと至極の映画について語る。第1回。(取材・文/ZAKKY)
『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』(1985)
ーーーまずは、往年の名作です。 「これはもう、好きな映画はと訊かれたら、絶対に答えます。ジャンルで言うと、ヒューマンドラマですね。 主人公であり、病気の母親と暮らしている12歳の少年イングマルは、『僕は どれだけ不幸でも、当時のソ連の宇宙飛行の実験で、月に飛ばされてしまったライカ犬よりは幸せだ』みたいなことを、呪文のように唱えるんです。 そのフレーズを何かで知って気になっていたのですが、鑑賞したのは公開後、僕が大学生のころでした。レンタルビデオ店で見つけて、あの時の映画だと思って。すごく悲しい話なのかなと思っていたら、ユーモアたっぷりの面白い映画でして。 ストーリーと共に、主人公の舞台が何が起こるか分からない場所へと変わっていくのですが、自分も体験している感覚になっていくんですね。 50年代のスウェーデンが舞台なんですけど、イングマルのお母さんが病気になっちゃって、兄とも別々の場所に、疎開することになるんですよ。 で、イングマルが行った先が、親戚の叔父さん、叔母さんの家なのですが、 駅に引き取りに来てくれた彼らの顔が、いい感じですごく嫌な表情をしていて、めちゃくちゃリアルなんですよ(笑)。 顔の造形が変だとか、人間的に変な2人が来たということでもないんですけどね。その2人の絶妙な叔父さん・伯母さん感に心掴まれてしまいまして。 ーーーう大さんらしい、着眼点ですね(笑)。 「もちろん、その人たちがコメディ―リリーフなわけではないんですけど、とても印象的で。イングマルから見た叔父夫婦の第一印象は良くはないですよ。なんでこの人たちの家に 滞在しなきゃいけないの? と。 でも、話しているうちに平気になっていき、叔母さんが作った嫌いな料理も気にならなくなってっという、神経質な子どもが徐々に馴染んでいく感じがいいんですよね。 僕はそのような体験をしたことはないですが、何か幼少期に体験したことあるようなないような感覚に陥るんですよね。例えば、疎開先のおじいさんが、隠していた下着のカタログを老眼で読めないから、イングマルに読ませたりするなど、色んな細かいエピソードがあります。 それが全部すごくユーモアがあって。 この映画ってコメディなのか、悲しい話なのか、はたまたホラーなのかと、分からなくなる配合が僕の作る演劇にも通じる部分があって」 ーーー なるほど。 「それってまさに人生そのものだとも思うんです。僕たちが生きてる社会であり、でも最終的にはめちゃめちゃ爽やかに終わるという」 ーーーバットエンドではないと。 「あ、でも、ハッピーエンドでもないですよ。あと、ラッセ・ハルストレム監督の作品では、レオナルド・ディカプリオ主演の『ギルバート・グレイプ』も好きですね」 (取材・文/ZAKKY)
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