『マリウポリの20日間』 「この映画が作られなければ良かった」と語る監督
ニッポン放送「ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町」(日曜朝5時~)で、おススメの最新映画をご紹介しているコーナー『サンデー早起キネマ』。4月21日は、人生にとって何が大切かを考えさせられる3本をご紹介しました。 その1本は、3月の第96回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を受賞した作品『マリウポリの20日間』。
アカデミー賞を受賞された時のミスティスラフ・チェルノフ監督の言葉が忘れられません。「この作品はウクライナ映画史上初めてアカデミー賞を受賞しました。しかし、おそらく私はこの壇上で、『この映画が作られなければ良かった』などと言う最初の監督になるでしょう。このオスカー像を、ロシアがウクライナを攻撃しない、私たちの街を占領しない姿と交換できれば、と願っています」
この作品は、包囲下の人々が経験した痛ましいマリウポリの惨状の記録であり、同時に、紛争地帯から報道がどのように行われていたのか、そして、彼らが配信し続けた報道が世界にどのような影響を与えたのかを知る機会を与えてくれます。
2022年2月、ロシアがウクライナ東部の都市マリウポリへ侵攻を開始します。これを察知したAP通信のウクライナ人記者であるミスティスラフ・チェルノフは、仲間とともに現地に向かいました。ロシア軍の容赦のない攻撃による断水、通信遮断……瞬く間にマリウポリは包囲されていきます。海外メディアが次々と脱出していく中、彼らはロシア軍に包囲されたマリウポリ市内に残る唯一のジャーナリストとして、死にゆく子供たちや遺体の山、産科病棟への爆撃など、侵攻するロシアによる残虐行為を命がけで記録し、世界に発信し続けます。徐々に追い詰められていく中、取材班はウクライナ軍の援護によって、市内から脱出することに。チェルノフたちは辛い気持ちを抱きながらも、市民を後に残し、脱出を試みます。滅びゆくマリウポリと戦争の惨状を全世界に伝えるために……。