命知らず!?『トップガン』のギリギリ低空飛行を空母で強行… 戦闘機パイロットの“伝説”
軍退役後も元気だった「生ける伝説」
実際、この低空飛行もスタント的な一回限りのことではなく、海上エアショーなどでスノッドグラス氏の定番演技として定期的に実施されていたといいます。スノッドグラス氏はその後も、飛行隊長などとしてF-14「トムキャット」に関わり続け、1999(平成11)年に退役するまでにF-14「トムキャット」での総飛行時間は約4800時間を記録しています。なお、この数字はアメリカ海軍のトムキャットパイロットの中で最長の記録になるそうです。 スノッドグラス氏は海軍を退役した後も、飛行機と関わり続け、民間エアショーパイロットとして、F-86「セイバー」やP-51「マスタング」、F4U「コルセア」といった第二次世界戦機のクラシックな戦闘機から、T-33「シューティングスター」ジェット練習機、さらには旧ソ連製のMiG-17といったジェット戦闘機でのデモフライトも行っています。それらの飛行ではかつての「トムキャット」で行った低空飛行を観客の前で行い、北米のエアショー業界でも有名人となりました。 2011年には民間軍事請負企業「ドラケン・インターナショナル」(現在の社名はドラケン)の設立にも関わり、同社のチーフパイロットとして軍相手のアグレッサー業務にも従事。「ドラケン・インターナショナル」が所有するTA-4K「スカイホーク」(複座型)が州空軍のF-16「ファイティング・ファルコン」相手に初めての撃墜(訓練での擬似的なもの)を記録した際には、その後席にスノッドグラス氏が乗っていたとか。 残念ながらスノッドグラス氏は2021年7月24日、永い眠りにつきましたが、前出の空母「アメリカ」でのファミリークルーズにおける超低空飛行の写真とそれに付随するエピソードは、氏ならびにF-14「トムキャット」の伝説を後世に伝えるものとして、末永く語り継がれることは間違いないでしょう。
布留川 司(ルポライター・カメラマン)