『イカゲーム』シーズン2最速レビュー! 紛れもなく2024年を象徴する傑作ドラマシリーズに
明らかにシーズン1とは異なる次元に向かった『イカゲーム』シーズン2
11月にロサンゼルスで行われた世界のプレス向けインタビューで、ファン・ドンヒョク監督はこう述べていた。 「シーズン2と3を通して描きたかったのは、ゲームの主催者が悪で、ギフンが彼らを止められるか、という話ではありません。自分自身にも問いかけました。“私たち”とは、弱い立場にあるほとんどの人々を指しますが、私たちは世界をより良い場所にするために努力する意志と強靭さを持っているのでしょうか? 人類には、世界の流れを変えるだけの力があるのでしょうか? そして、私たちはより良い世界を共に築くために、欲望を手放すことができるのでしょうか? 歴史を振り返ってみても、権力者が悔い改めることで世界が変わったことは一度もありません。支配下にある大多数の人々、つまり私たち一人一人が、より良い未来を共に築くために変化を起こし、希望を持つことができるのでしょうか?と問いかけたいのです」 ファン・ドンヒョク監督のインタビューはアメリカ大統領選の前日に行われ、「みなさんも、明日は大事な選択をする日ですね。どうぞ良い選択を」とインタビューを終えていた。それから1カ月後、ソウルでワールドプレミアを予定していた12月9日の直前、12月3日に韓国の尹錫悦大統領が戒厳令を発出するという非常事態が起きた。同日深夜に国会で可決された解除要求決議案をもとに戒厳令は解かれ、大統領の弾劾訴追案は2度目の投票で3分の2以上の賛成票を得て可決されている。韓国の議会投票も米大統領選挙も、ドラマ内のゲーム継続投票のようだ。ギフンが大義をもとに起こした行動は正しかったと言えるだろうか? 戦争はこうして始まるという比喩に思えてならなかった。エピソード7でのフロントマン(イ・ビョンホン)の言葉に、冷や水を浴びせられたのはギフンだけではない。是か非の二極でものごとを観がちな私たち、さらには一方的な信念で対立を煽るSNSや現代社会のあり方にも警鐘を鳴らす。死闘を勝ち抜き高額賞金を手にしたのにゲームに戻ったソン・ギフンに、誰もが反対したシーズン2を作ったファン・ドンヒョク監督が重なる。だとすると、監督が問おうとしているのは映像業界を蝕む資本主義の行く末か、またはそれすらも個人的な良心の暴走にすぎないのか……。監督がファイナルシーズンと公言するシーズン3にどんな帰結が待っているのか、皆目検討もつかない。 資本主義社会の寓話と熾烈な競争社会を描いたシーズン1、競争を生む資本主義と共存の共産主義、そして人々の意識が多元化する社会における民主主義の是非を問うシーズン2。『イカゲーム』は、プロダクションデザインや音楽などのハイコンセプトで耳目を集め、どの国にも共通する社会問題をローコンテクストで描き人気を博した。シーズン2は明らかにシーズン1とは異なる次元に向かい、2025年配信予定のシーズン3に大きな期待を繋げる大傑作になっている。今作がNetflixでどんな新記録を打ち立てるのかにも注目が集まっている。 参照 ※ https://variety.com/2024/tv/news/squid-game-viewers-netflix-seoul-experience-1236232449/
平井伊都子