介護保険を「撤退戦」から守るたった1つの方法
政府は、その年に生産された付加価値(所得)を、いますぐに必要でない人からいますぐに必要な人に分配し直している(所得を再分配している)だけであり、そうした連帯、助け合いの仕組みが社会保障であるという理解が広まるかどうか。 社会保障を中心とした再分配国家を五公五民の政府に例えるおかしさに気づく人がどれほど多くなるのかどうか。そうしたことに、いまあるフクシを超えて、新しい世界を切り拓くことができるかがかかっている――そのようにも思えます。
この図をご覧ください。 横軸は家計所得、縦軸は医療サービス支出です。左は日本、右はアメリカです。国民皆保険の日本は、所得とは関係なく医療サービスが支出されています。アメリカは、所得が高いほど医療支出が大きくなる。どちらの国がよいですか? ということですね。 八代尚宏さんたちのグループがこの本を書いています、彼らは、右側がよいという。そのためにこの図を作っている。しかし、みなさんはどうでしょうか?
もし、左のように、せめて医療くらいは必要に応じて利用できる社会、みんなが平等に利用できる社会が望ましいと考えるのであれば、それを実現できる方法は、医療サービスの支払いを市場から外して、支払いは税・社会保険料で賄うしか方法がありません。 介護も、支払い能力ではなく必要に応じて利用できる社会が望ましいと考えるのならば、税・社会保険料で賄うしかありません。 公的介護サービスが劣化している、介護マンパワーの賃金が低すぎる、介護マンパワーが不足しているというのであれば、この問題を克服するために税・社会保険料を上げるという政治家を応援するしかない。ただ、現実には、逆のことを言ったほうが支持者が増えるという傾向は強まっています。
■所得の再分配とは・・・いま一度 次のスライドには、社会保障が果たしている所得の再分配のイメージを描いています。 家計は、右側の市場で働いて得た所得を、いったんは政府に、税・社会保険料として預けて、今度は、必要になったときに給付を受ける。市場が家計に分配した所得を「一次分配」、政府が家計に分配する所得を「再分配」と呼びます。この再分配を充実させるためには、この図の中で、家計から政府に向けた矢印、税・社会保険料を増やすしかない。