膨らむ米連邦債務、国債市場へのリスク増大-市場参加者が懸念表明
(ブルームバーグ): 米債券業界のリーダーは同国の財政見通しに悲観的で、連邦債務残高が増え続けて長期国債利回りが高水準で推移するとみている。
5日にニューヨークで開かれた米国債に関する国際スワップ・デリバティブ協会(ISDA)と米証券業金融市場協会(SIFMA)の討論会で、市場参加者がこのような見方を示した。
11月の米大統領選の勝者がバイデン大統領とトランプ前大統領のどちらになっても、米国債の供給増加の懸念に対処する歳出削減や増税の可能性は小さいままだとし、最も憂慮すべきなのは民主、共和いずれかの党がホワイトハウスと上下両院の全てをコントロールするシナリオだとしている。
BNYメロンのジェイソン・グラネット最高投資責任者(CIO)は「選挙結果がどうなろうと、5-10年先を展望すると、財政の行方は安心できない」と語った。
米国債発行残高は27兆ドル(約4200兆円)と、10年前の約12兆ドルから膨らんでいる。米財務省は先月、中長期国債の四半期定例入札の規模を据え置いた。同省はそれ以前の3四半期にわたり中長期債の発行規模を拡大していた。
財務省は少なくとも向こう数四半期は国債発行増加を見込んでいないと説明したが、議会予算局(CBO)は慢性的な財政赤字により連邦債務残高が2034年度末までに約48兆ドルに増大すると予想している。
ブリッジウォーター・アソシエーツのクロスアセット戦略責任者、アレックス・シラー氏は「2人の候補者は支出の優先項目が異なっていても、全体的な財政スタンスにそれほど相違がない」とし、「違いが生じるのは勝者が議会もコントロールするかどうかだ」と指摘した。
ソシエテ・ジェネラルの米金利戦略責任者、スバドラ・ラジャッパ氏は「投資家にとって連邦債務と財政赤字は中心的関心事だ」と発言。共和党がホワイトハウスと上下両院を支配すれば債務と赤字の問題に対処する意欲は一段と低めになると考えられるものの、全体的には「両党とも支出に対処するつもりはほとんどない」との分析を示した。