【県産集成材】官民で利用拡大を(12月24日)
新たな建築資材として注目される県産集成材の生産が県内で軌道に乗り、大規模な建造物で使用されるようになった。本県の新たな産業として技術力をアピールし、利用が拡大するよう官民挙げた取り組みを求めたい。 福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想に基づく県産木材の新たな需要創出プロジェクトの一環として、浪江町に「福島高度集成材製造センター(FLAM=エフラム)」が整備され、2023(令和5)年4月から本格稼働している。高周波プレスという特殊な加工で板を貼り合わせ、最大1・25メートル四方の巨大な断面の柱を製造できる。年間1万5千立方メートルの生産が可能で、大断面の集成材工場としては国内最大規模を誇る。 これまでに浪江町の介護関連施設や東京都内の民間のビル、社員寮などに活用されてきた。2025年の大阪・関西万博のシンボルとして会場中央に建設される大屋根(リング)の材料ともなっている。万博での使用は県産材の品質の高さを国内外に伝える絶好の機会になる。
あぶくま信用金庫が南相馬市に新築した本店ビルには、南会津産カラマツの集成材が使用された。割れや狂いが出やすく、建築材では使いにくいとされてきたカラマツの難点を、接着剤で貼り合わせて強度を高めるエフラムの加工技術によって克服した。燃えにくく炭化しやすい性質から、高い耐火性能が認められていることもあって、需要が増えている。 南会津産カラマツの集成材は、三井不動産が東京・日本橋に建設する国内で最も高い18階建ての木造ビルにも採用された。郡山市の藤寿産業が部品製造に当たる。県内企業の独自技術によって、強度と耐火性を兼ね備えた木製建材の活用拡大が期待されている。同社を核に関連産業が集積する可能性も注目される。 県は「ふくしま県産材利用推進方針」に基づき、2022年度から自ら整備する全ての建築物で、原則として県産木材を利用するよう検討を進めている。林野庁は商業施設や工場、宿泊施設など、民間建築物の木造化に対する助成を拡充する方針を示している。県産木材の利用を一層広げるには公的補助の充実も求められるだろう。(平田団)