阪神・前川 父の日に届けたプロ初満塁弾「よっしゃ」雄たけび 高卒3年目以内では新庄以来32年ぶり
「ソフトバンク1-4阪神」(16日、みずほペイペイドーム) 「父の日」に最高のプレゼントだ。阪神・前川右京外野手(21)が初回にプロ初の満塁アーチを放った。高卒3年目以内の満弾は92年の新庄剛志以来32年ぶり。歴史的な一発でレギュラー奪取にまた前進した。チームは連敗を2でストップ。3位だったDeNAも勝ち両チームが貯金1となったが、勝率2毛の差で阪神は4位から一気に2位に浮上した。 【写真】初回の2死球で渡辺にも危険な1球 木浪に続く連日死球に不穏な空気に 打った瞬間、無意識に自然とバットを放り投げていた。それだけ確信があった。前川が高校以来のグランドスラム。「うれしかったです」。試合開始から、およそ13分での号砲。とにかくほしかった先制点を一振りで奪ってみせた。 初回1死満塁。これ以上ない先制機だった。「犠牲フライでも何でも良かったんで、とりあえず点を取ろうと思って」。石川の147キロ直球を強振。打球速度171キロの豪快弾は右翼席中段に突き刺さった。 三塁を回る時には「よっしゃ」と雄たけび。本塁生還後はナインから頭をたたかれた。「ホームランを打てると思ってなかったんで、ビックリしました」。交流戦での満塁本塁打は今岡や金本らに次いで、球団7人目。高卒3年目以内の満弾は92年の新庄剛志以来で球団史にも名を刻んだ。 父の日の一発。父・栄二さんへのプレゼントにもなった。節目の日にはスニーカーなどを贈ってきた。5月16日の父の誕生日には安打を打ち、この日は本塁打。孝行息子の右京は「連絡をマメにくれるんで、もうちょっとメリハリをつけて連絡してほしい」と冗談交じりにクシャッと笑った。 入団時に球団から期待されたのが、佐藤輝とのクリーンアップ形成。高卒3年目ながら堂々と5番に座っている。岡田監督は「左の時でも先発したりな、今がレギュラーポジションを取る、そういう過程じゃないか」と高く評価した。 交流戦も決して順風満帆だったわけではない。6月4日の楽天戦での延長十回。先頭で則本から見逃し三振に倒れた。今季の中でも屈辱的な打席。虎風荘に帰ってから、10回、20回と三振の映像だけを見返した。 「次の日も試合はあるんで、うれしいことはなるべく消す。悔しいことだけをちゃんと振り返るようにしてます」 就寝前に反省を済ませて、起床後は切り替え。「次の一日は始まっているんで」と引きずらずに球場へと向かう。15日も好機で最低限の仕事はしたが、試合後には唇をかんだ。この日も喜びはほどほど。「きょうのことは忘れて、またセンター中心に低い打球を打っていきたい」。このメンタルが前川を支えている。 チームは連敗ストップで貯金生活に再突入。順位も4位から2位へ一気にジャンプアップした。休養日を挟んで、18日の日本ハム戦が交流戦最終戦。「これからも勉強して試合に臨みたい」。定位置奪取はもうすぐ。前川が虎の中心選手になろうとしている。 ◆阪神2位→4位→2位 セ・リーグの順位決定は①勝率②勝利数の順。15日時点では、敗れた阪神(30勝30敗4分け)と勝利したDeNA(31勝31敗1分け)が同じ勝率5割となったものの、勝利数で阪神が下回り、DeNAより下位に。加えて勝利した巨人が勝率・508となったため2位だった阪神は一気に4位転落となった。そして16日は阪神とDeNAが勝利。順位は①勝率優先となるため、阪神(31勝30敗4分け)=・5081、DeNA(32勝31敗1分け)=・5079となり、2毛差で阪神が上位に。引き分けた巨人は31勝30敗5分けで阪神と同じ勝敗数となり共に2位となる。