〈AIを重視するインドの防衛〉その理由から見える日本の安全保障が進むべき道
実際に勝ったのはアメリカの物量をもたらす技術
しかし、ドイツと日本は、本当の意味で、世界最強の軍隊を作ったといえるだろうか。第2次世界大戦に最終的に勝利したのはアメリカだ。ドイツと日本ではない。 アメリカはどのようにして勝ったのだろうか。それは圧倒的な物量、それをもたらすさまざまな施策であった。 ドイツや日本が、新しい戦術を採用して、各国の軍隊を破った時、アメリカは、自らも、その戦い方を採用することに決めた。ただ、そこにはアメリカ独自の側面もあった。 それは、大量生産することを重視し、規模が大きいことであった。当時のドイツは、エリート部隊は自動車化していたが、ドイツ軍全体を自動車化するには至らず、多くの部隊は、まだ徒歩や馬で移動していた。 しかし、アメリカは違う。自動車化が素晴らしいアイデアだと理解してからは、大量の自動車を生産して、すべての部隊を自動車化してしまった。自動車の生産能力が高かったからできた、というだけではない。当時のアメリカはすでに自動車化社会で、運転免許を持った人が多かった。だから、運転手にも困らなかったのである。 アメリカは戦車の大量配備にも成功し、ドイツ以上に多くの戦車を生産、配備した。だから、戦場によっては、ドイツの戦車は5倍の数のアメリカ戦車と戦った。
これは、アメリカの生産能力が高いから実現したこともあるが、アメリカは量産するために多くの工夫もした。例えば、強力な重戦車の生産をキャンセルして、中戦車の生産に、できるだけ一本化し、より大量生産・大量配備を狙ったのである。 同じように、日本に対してもそうであった。空母の定義にもよるのだが、真珠湾攻撃の前、日本は9隻の空母を持ち、アメリカの7隻よりも多かった。日本の方が空母を重視していたからである。しかし、戦争の最中、日本は16隻の空母を建造したのに対し、アメリカは約160隻の空母を建造し、自国海軍に配備しただけでなく、イギリスにも30隻以上、供与したのである。 つまり、アメリカが示したのは、ドイツや日本が採用した新しい戦い方のアイデアが短期的には大きな効果を発揮しても、そのアイデアが知れ渡ってしまうと、その後は、物量が勝敗を左右することであった。 筆者がアメリカに滞在している時、アメリカの物量の技術について、経験したことがある。それはアンドリュース統合軍基地での航空祭の時であった。 何万もの来場者が来ることが予想されるため、アメリカ軍は大規模なシステムを整えていた。まず、集合場所は、航空祭の会場から遠く離れたスポーツスタジアムにする。そこにつくと、巨大なゲートでテロ対策として荷物検査が行われる。 そこで、土日は使われていない大量のスクールバスを何百台も借り上げておき、荷物検査が終わった観客は、バスに載せられ、長い車列となって航空祭の会場に向かう。バスには1台1台、案内役の米軍人とバスの運転手が乗っている。 帰りは逆順である。アメリカが、いかに物量を重視しているか、わかる経験であった。