なお身構えるウォール街トレーダー、8月相場メルトダウン記憶鮮明
(ブルームバーグ): 現在の金融市場を大まかに見てみると、米国株が最高値を更新し、社債は不安の兆しを見せず、コモディティーは世界経済を巡る楽観的な見方に支えられて底堅く推移している。
だが、これを掘り下げると、先行きはたちまち見通せなくなってくる。表向きは堅調でも、ボラティリティーがほぼ全ての資産クラスで同様に目立つ。8月と9月に状況が大きく不利に働き、相場急落で不意を突かれたトレーダーらはヘッジに奔走し、プロテクションのコストを相場と同じくらいのペースで押し上げている。
RBCキャピタル・マーケッツのデリバティブ戦略責任者、エイミー・ウー・シルバーマン氏は「可能性が低く、非常に悪いイベントが起こる確率が高くなっている」と分析。「8月のVIX急上昇後、市場は正常化し、最高値を更新したが、根本的な『懸念』は高止まりしたままだ」と語る。
投資家が不安を感じている時に資産価格が上昇することはよくあるが、今の状況は特に極端で、強気と懐疑が同居している。米銀JPモルガン・チェースとウェルズ・ファーゴの決算が予想を上回り、S&P500種株価指数は11日、今年45回目の過去最高値を更新。週間ベースでは5週連騰となった。
一方で、8月上旬と9月の相場急落はトレーダーの記憶に新しく、強気な割には投資家の緊張を測る指標は警戒感を示している。株式のCBOEボラティリティー指数(VIX)と国債のICE・BofA・MOVE指数はいずれも月初から急上昇した。
言い換えれば、今は平穏だが、過去のショックと先行き不透明感がセンチメントに重くのしかかっている。
決算シーズン
夏の混乱に打ちのめされたトレーダーらは、米大統領選の行方や中東情勢などへの対応を余儀なくされている。
S&P500種の株価収益率(PER)が2021年以来の高水準を付けている市場にとって、決算シーズンが次の試練となる。第3四半期の利益は4%増と、ここ1年で最も小さな伸びになると予想されているが、投資家は今後数カ月で企業収益が持ち直すかどうかに注目するだろう。ブルームバーグ・インテリジェンスがまとめたデータによると、アナリストは来年の伸び率が14%に加速すると見込んでいる。