元Jリーガーがなぜ自炊料理? 競技を突き詰めた結果の「レシピ本」 SNS総フォロワー30万人
サッカー以外にも「広い世界がある」
サッカーとSNS発信、そのための勉強を続けることで、「人生はサッカーだけではなく、もっと広い世界がある」と知ったそうです。 「最初は“点”だった知識が、つながって線になり、その線が面になり……。もっと広い視点で、自分や世界を俯瞰して見られるようになりました」 人間関係や立ち居振る舞い、言葉遣いも自然と変わっていきました。 「アスリートは、できないことにどう向き合って、どう改善していくかが必要です。それと同じことをやり続けただけですが、僕みたいに突き詰めて行動する人はそういないと自負しています」 これまで「1日1個、レシピ開発をする」という目標を自身に課し、今ではレパートリー数は800個を超えるそうです。 「サッカーは相手がいるので予測不可能な面があるのですが、レシピ作りは、外的要因に左右されません。レシピ作りを難しいと思ったことは一度もないですね」
引退後も活躍、ロールモデルになりたい
引退を決めたのは2022年のシーズン終わりでした。 「改めて自分を俯瞰した時、競技にすべての時間をかけてフルコミットしている人間にはかなわないと思ってしまった」と思い返します。 競技とSNSを全力で両立させることは厳しいと感じ始め、「サッカーを引退した後も活躍している姿を見せることで、将来に不安を感じているアスリートやその親御さんが希望を見出せるロールモデルになることが僕の価値なのでは、と思うようになりました」と話します。 小泉さんのSNSには、アスリートのキャリアに関する相談も届くそうです。 「『セカンドキャリアが不安だから何か始めてみようかな』という選手はたくさんいます。でも僕は、アスリートはスポーツを突き詰めることがまず何よりも大事だと思っています」 その過程で、生活習慣を見直したり、どうしたら応援される選手になれるのかを意識したりすることが、「『その人にしかない価値やセンス』になり、今後の仕事や収入につながってくるのではないでしょうか」と語気を強めます。 人から喜んでもらったり、誰かの力になったりする活動を続け、「元アスリートで活躍している人といえば小泉勇人と言われるようになって、アスリートの地位を向上させたい」と語る小泉さん。「食を起点に将来のアスリートを応援していきたいです」と話す声には、自信がにじみ出ています。
取材を終えて
SNSの投稿で、苦労やしんどさを見せず、引退後にビジネスで成功し、悠々自適に暮らす「きらきら感」を敢えて演出している小泉さん。その意図は、アスリートのセカンドキャリアに希望を持ってほしいとの思いがあるといいます。 自信に満ちあふれる姿の背景には、人一倍、時間とお金を投資して、努力をしてきた道のりがありました。「ローマは一日にして成らず」ではないですが、競技を突き詰め、汗、水、涙を流し、もがきながらも行動をし続けた結果、小泉さんの今があると感じました。