米商業用不動産の深まる苦境、群がる空売り筋-遠のく利下げが痛手
(ブルームバーグ): 空売り筋が商業用不動産を標的にする動きが再び強まっている。米地銀の脆弱(ぜいじゃく)性やオフィス物件の継続的な価格下落、金利の高止まりが背景にある。
20日にはデータセンターを保有する米不動産投資信託(REIT)エクイニクスの株価が1月以来の安値に沈んだ。同社は会計を操作し、「人工知能(AI)夢物語」を語っていると主張する空売り投資家ヒンデンブルグ・リサーチの標的になったためだ。S&Pグローバルは今月、エクイニクスは世界で最も空売りされている銘柄だと指摘していた。
米REITの株下落、見通しは「AI夢物語」と空売り投資家が標的に
ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)やドイチェ・ファンドブリーフバンク(PBB)といった金融機関が不動産ローンに対する多額の引当金を発表したことで、投資家の間では警戒が高まっている。20日に発表されたMSCIリアル・アセッツの報告書によると、米国では2月までの1年間でオフィス不動産の価値が15.2%急落した。
ポルポ・キャピタル・マネジメントの創業者、ダニエル・マクナマラ氏は「金利がゼロに戻ることはなく、オフィスセクターは永遠に変わってしまったという事実を、投資家がようやく認識し始めた」と指摘する。同社は同セクターを空売りしている。
S&Pグローバルによると、NYCB株の13%近くが空売りされており、昨年11月の3%から増加している。NYCBはニューヨーク市で家賃規制の適用対象である集合住宅の主要な貸し手で、こうした物件は目下、価値が急落していることが背景にある。
マディ・ウォーターズの創業者である著名空売り投資家のカーソン・ブロック氏はブルームバーグテレビジョンで、米投資会社ブラックストーンのREIT「ブラックストーン・モーゲージ・トラスト」について、「一段と弱気」になっていると指摘。集合住宅不動産の厳しい環境を理由に挙げた。より規模の小さい貸し手に影響が連鎖する恐れがあるという。同社は昨年12月、同REITをショートにしていることを明らかにしている。