富山大空襲伝えたい 県内高校生有志グループ「輪音」発足、戦争体験者取材し記憶継承
戦争の記憶を継承し平和の大切さを伝えていこうと、県内の高校生の有志によるグループ「輪音(わおん)」が発足した。富山大空襲の体験者に聞き取るなど、生徒8人が不戦を願って活動。発起人の高岡南高2年、薬師子龍代表(16)は「体験者が高齢化する中、生の声を聞くには今動くしかない」と話す。 薬師さんが輪音を発足させたのは、曽祖母が昨年2月に99歳で亡くなったことがきっかけ。生前に「富山大空襲の日は空が真っ赤だった」と聞いたことがあった。だが、施設生活でコロナ禍は面会できなかったこともあり、詳しく聞けないまま別れたのが心残りだった。 間もなくして「ひいおばあちゃんのような戦争体験者が亡くなれば、その声を後世につなげなくなる」と危機感を抱くようになった。自分たちの世代ができることは何かを考え、体験者の記憶を継承する役割を担うことを決意。同級生や知り合いに声をかけて、今年2月に輪音を結成した。 現在は高岡南6人と、新湊と富山国際大付属の各1人が所属。「輪音」は、平和の輪を広げたいという思いから名付けた。
地元の戦禍を知るため「富山大空襲を語り継ぐ会」に加入。同空襲は1945年8月2日未明に焼夷(しょうい)弾が投下され、富山市街地の99・5%に当たる1377ヘクタールが焼き尽くされ、確認されただけで約2700人が亡くなった。 メンバーは春休みを利用して体験者6人に取材。「自分をおぶっていた母が目の前で亡くなった」「下着姿で逃げている人もいた」。聞き取った証言は若者に知ってもらうため、SNS(交流サイト)に投稿している。 今年の夏休みには、小学生に戦争体験を伝える催しを開く。「輪音平和講座プログラム」と銘打ち、学童に通う児童に戦争について考えてもらう。薬師代表は「平和の大切さを考えてもらうための種をまく活動にしたい」と話す。 他のメンバーも活動に意欲を見せる。高岡南2年、永原章久さん(16)はロシアによるウクライナ侵攻が平和を考える契機になった。「戦争は人ごとではない。輪音の活動で一人一人が平和について考えてほしい」と訴える。
祖父が体験者で語り部として活動し、自身もその後を継ぐ富山国際大付属1年の西田七虹(ななこ)さん(16)は「仲間ができて頼もしい。若者に伝えるという同じ目標に向かって活動していきたい」と話す。 富山大空襲を語り継ぐ会は輪音に期待を寄せており、後押しするため学生部を設立した。柴田恵美子事務局長(76)は「語り部の高齢化が課題となっていたが、高校生が加入してくれて夢のよう。自分たちとは着眼点が違い、幅広い世代に戦争体験をつないでいける」と語った。