電気グルーヴ35周年ツアー、 圧巻のパフォーマンスで満員のフロアを魅了した、Zepp Haneda追加公演をレポート
電気グルーヴは、日本の音楽シーンにおいて、いつも“先端(旬)のマガイ物でありながら本物”で在り続けた。同様のジャンル、もっと言ってしまえば、電気グルーヴというスタイルのフォロワーが、35周年を迎えた今でも出てこないのがその証拠だろう。さらに『FUJI ROCK FESTIVAL』へ何度も出演や、『RISING SUN ROCK FESTIVAL』で一晩中テクノミュージックを流し続ける“LOOPA NIGHT”を長い間ルーティンにしていたことに加えて、石野卓球がオーガナイザーを務める国内最大級の屋外テクノイベント『WIRE』を、15年に渡り開催してきた。こうしてしっかり国内のフェスでその存在を認知させ、無二のライブパフォーマンスをしてきたことで、電気グルーヴは音楽ファンを確実に手中にしてきたのだ。 少し前の話になるが、2022年10月15日、横浜・みなとみらいのぴあアリーナMMにて行われた復活ライブ『and the ARENA~みんなとみらいのYOUとぴあ~』での幅広い客層に驚いた。そしてこの日も、じつに幅広い年齢の客層がフロアで歓声をあげて自由に踊りまくっていた。ライブのキラーチューンのひとつ「B.B.E.」では小道具“カニばさみ手袋”も登場。卓球は卓の前でニッコニコで横歩きしていた。 ライブは後半へ向け、さらに熱気をあげていく。サイケデリックな映像が視覚から音像へ誘った「Nothing’s Gonna Change」で、瀧はスタンドマイクを客席に向けてレスポンスを乞うポーズ。ブルーに染まったステージから、レーザー光線が空間を切り裂くように踊った「スマイルレス スマイル」。キックの低音もどんどん前面に出てくる。「N.O.」では、卓球がステージセンターで歌唱。いつもの卓球の位置、卓の前に瀧が移動し、椅子の上にあがり、観客を煽っていく。「Flashback Disco(is Back!)」のエンディングでは、卓球が“ディスコ!フラッシュ!バーック!”と叫んだ直後に、バックトラックの音数が減り、曲の終わりのワンフレーズで瀧が振り返りざまにサングラスをとってポーズを決めた。 演歌とテクノの融合との呼び名も高い「ジャンボタニシ」では、映像にタニシのイラストが躍る。冷静に考えたら映像もカオス! 瀧は朗々と歌いながら、フロア最前列の観客とタッチ。「見てください、聴いてください、電気グルーヴでございます、35年やってます」と卓球が叫ぶ。両手をあげ地鳴りのような大歓声で応えるダンスクラウド。ステージ上のLEDが空間に「1」「9」「9」「7」と時を刻む。「かっこいいジャンパー」の後は、本編ラストの「電気ビリビリ」。カラフルなレーザー光線がZepp Hanedaの空間を彩る。それはまるで祭りを彩る万国旗のようだった。国内外でその名を馳せる石野卓球、電気グルーヴ、そしてケンタウロス、おっと、否、ピエール瀧。レーザー光線の万国旗が世界中から電気グルーヴの35周年をお祝いしているように見えた。 アンコール。「アンコールありがとうございます」と瀧。卓球は本編の「B.B.E.」で登場した“カニばさみ手袋”がいたく気に入った様子で、いきなり「瀧もカニやれば」とひとこと。「俺もカニやる」と受けた瀧。“カニばさみ手袋”をはめようとするも「このカニ(ばさみ手袋)、びっちゃびちゃじゃん。でもお前(=卓球)と俺の中だから許す」と無理矢理“カニばさみ手袋”をはめる。そんな中“カニばさみ手袋”をつけた卓球が、客席に向かい「じゃーんけん、ぽん!」と右手を向ける。即反応してじゃんけんぽんでレスポンスをする観客。ステージも強者揃いなら客席も強者揃いだ。大爆笑しながら「ここで今パーを出してくる人、優しいね」と笑顔を見せる卓球。中盤の“周年の歌の連発”に「前髪とトイレをたくさん聴いたでしょ。これももうないからね」と、この日のライブがいかにレアであることを言葉にした。が直後、“カニばさみ手袋”をズイッと前に出し「クラブミュージック!」と放ち、そこにいる全員を大爆笑させた。 ここからしばらく“カニばさみ手袋”ではしゃぐ卓球の姿があったが、割愛させていただく。手だけカニのまま「電気グルーヴ32周年の歌」をステージ中央でふたりが椅子に座って披露。爽やかな風が一瞬かけぬけた......かもしれないかな? 最後の最後は「人間大統領」。瀧はカニ手で投げキッス、卓球はカニ手でカニ歩きをして、ステージを後にした。石野卓球とピエール瀧のふたりがライブ中、がっしり肩を組んだ瞬間に、あぁ、電気グルーヴはまだまだ続く、そしてもっともっと面白い、ずっとずっとフィジカルで刺激的な“電気で作るグルーヴ”を体感させてくれるだろうと思った。いや、体感させてくれるはず! 石野卓球さん、ピエール瀧さん、これからも最高で変えのきかない電気グルーヴをよろしく! Text:伊藤亜希 <公演情報> 『電気グルーヴ35周年ツアー“3594”』 10月6日(日) Zepp Haneda(TOKYO) 【セットリスト】 01.アルペジ夫とオシ礼太 02.Shangri-La feat. Inga Humpe 03.トロピカル・ラヴ 04.Slow Motion 05.DISCO UNION 06.Missing Beatz 07.ア.キ.メ.フ.ラ.イ. 08.Upside Down 09.Fallin' Down 10.電気グルーヴ10周年の歌 2019 11.電気グルーヴ25周年の歌 12.電気グルーヴ34周年の歌 13.電気グルーヴ35周年の歌 14.マイアミ天国 15.ニセモノ フーリガン 16.B.B.E.(Bull Beam Express) 17.ビコーズ 18.ユーのネヴァー 19.Nothing's Gonna Change 20.スマイルレス スマイル 21.N.O. 22.Flashback Disco(is Back!) 23.ジャンボタニシ 24.かっこいいジャンパー 25.電気ビリビリ En1.電気グルーヴ32周年の歌 En2.人間大統領