【週末映画コラム】70年代の映画を見ているような気分になる『悪魔と夜ふかし』/“未来の南北戦争”を描いた『シビル・ウォー アメリカ最後の日』
【週末映画コラム】70年代の映画を見ているような気分になる『悪魔と夜ふかし』/“未来の南北戦争”を描いた『シビル・ウォー アメリカ最後の日』 1/2
『悪魔と夜ふかし』(10月4日公開) 1977年、ハロウィンの夜。米放送局UBCの深夜のトークバラエティー番組「ナイト・オウルズ」(夜ふかし)の司会者ジャック・デルロイ(デビッド・ダストマルチャン)は、生放送のオカルトライブショーで視聴率の低迷を打開しようとしていた。 怪しげな超常現象が披露された後、この日のメインゲストとして、ルポルタージュ『悪魔との対話』の著者であるジューン博士(ローラ・ゴードン)と本のモデルとなった悪魔つきの少女リリー(イングリッド・トレリ)が登場する。 視聴率獲得のためには手段を選ばないジャックは、テレビ史上初となる“悪魔の生出演”を実現させようとするが、番組がクライマックスを迎えたその時、思わぬ惨劇が起こる。 テレビ番組の生放送中に起きた怪異を、ファウンドフッテージ(怪異に襲われた撮影者が残した映像の体裁を取る)形式で描いたオーストラリア製ホラー。監督・脚本はコリン&キャメロン・ケアンズ兄弟。 この映画のアイデアの基は、実際にオーストラリアで放送されていた深夜のテレビショーにあるようだが、日本でも「11PM」のような同種の番組があったので、そのうさんくさい雰囲気に懐かしさを感じながら、ジャズ(フュージョン)風の音楽やスタイリッシュな衣装と美術に彩られた70年代のテレビショーの再現に目を見張った。 そして、その中から、心に傷と秘密を抱えた主人公ジャックのおかしみと悲しみ、その裏に潜む狂気をあぶり出す手法はお見事。ダストマルチャンの好演も光る。 ケアンズ兄弟監督は「この映画は、70年代のトークショーとホラー映画に寄せた、私たちなりの悪夢的な叙情詩」と語っている。 その言葉通り、ウィリアム・フリードキンの『エクソシスト』(73)、ブライアン・デ・パルマの『キャリー』(76)、デビッド・クローネンバーグの『スキャナーズ』(81)といったホラーはもちろん、TV業界で成功するために狂気に陥る人物を描いた、シドニー・ルメットの『ネットワーク』(76)やマーティン・スコセッシの『キング・オブ・コメディ』(82)など、自らが影響を受けた70~80年代の名作へのオマージュ巧みに盛り込んでいるので、あの頃の映画を見ているような気分になった。