自衛隊員の職業病は「痔」「坐骨神経痛」……高速道路で隊員8人負傷事故でわかった「移動の過酷条件」
陸上自衛隊トラック荷台輸送の失態
11月25日午前9時ごろ、岩手県奥州市の東北自動車道で陸上自衛隊の大型トラック2台の追突事故が発生した。この事故で8人の隊員が自衛隊の車両で岩手県内の病院に運ばれたがいずれも軽傷とのことだ。事故当時、後方を走っていた車両には隊員25人が荷台で輸送されていた。事故当時現場付近は強風が吹き、道路わきの積もった雪が舞い上がり視界が悪かったという。 「長年のよだれや汗の悪臭で吐き気がする……」国を守る自衛隊員たちの想像を絶する悲惨な生活実態 今回の事故で8人もの負傷者がでたのは、乗車する隊員への安全配慮義務が果たせていなかった可能性が高い。通常自衛隊のトラック荷台輸送では、隊員を保護するシートベルトやエアバッグ等はない。事故当時の隊員達も事故の衝撃から自分を守るすべはなかったはずだ。安全装置のない状態では、仮にトラックの横転や激しい衝突事故になれば、人命が失われる重大事故になる可能性は否めない。 陸上自衛隊幹部自衛官の一人が、なぜ今も自衛隊がトラック荷台で人員輸送をするのかを語ってくれた。 「トラック荷台にかわる、十分な車両、輸送手段がないからです。隊員輸送に十分なバスやチャーター費用がでれば使います」 隊員の輸送で旅費が出るのは限られた高級幹部や特別な場合だけだ。一般の自衛隊員は運搬費と呼ばれる輸送費を使う。公共の交通機関を使うほどの予算はなく、バスや飛行機などを気軽に利用することはできない。一般隊員はほとんどが自衛隊のもつ車両での移動となるのだ。 自衛隊には人員を輸送する十分な車両や費用が無いため、今もトラック輸送を続けている。自衛隊のトラック事故はたびたびおき、荷台で輸送中の人員が死傷する事例も多い。隊員の健康や安全を守るためには、平時でのトラック輸送はやめ、米軍のように最適な輸送手段を選べるように変わってほしい。 一般的には道交法でトラックの荷台に人を乗せるのは、荷物を看守する目的で警察署長の許可がある場合しか許されていない。許可された場合でも必要最低限の人員しか認められない。警察や自衛隊など道交法適用除外の特別な職種だけが、多数の人員をトラック荷台で輸送することが可能だ。だが、予算が潤沢にある警察は戦後、すでに冷暖房付きのバス輸送に切り替えた。予算のない自衛隊員だけが今もトラック荷台での人員輸送を継続している。 ◆荷台には空調装置もない…… 自衛隊のトラック荷台はそもそも人員を輸送するのに適していない。硬い板のベンチと背板があるのみだ。加えて、車両の振動も大きいため常に隊員の足腰に負担がかかる。長時間のトラック輸送により、自衛隊員の職業病である「痔」や「坐骨神経痛」「ヘルニア」等の原因となっている。 荷台に空調装置がないことも問題だ。 トラック輸送を経験した予備自衛官は「数年前の予備自衛官の射撃訓練のときに、仙台から山形の東根射場というところに行ったことがあります。真冬に暖房のないトラックの荷台に乗せられたまま、峠を越えたのですが、メチャクチャ寒かったです。凍傷にはならなかったものの風邪をひきました」と話してくれた。トラックの荷台に乗車する隊員は空調が無いため、熱中症や低体温症になるリスクを抱えているのだ。平時でも自衛隊員の健康をわざわざ損ねるようなトラック荷台輸送でいいのか疑問だ。