自衛隊員の職業病は「痔」「坐骨神経痛」……高速道路で隊員8人負傷事故でわかった「移動の過酷条件」
一方、先進国の兵士はどんな移動手段を使っているのだろうか。危険なトラック荷台輸送はほとんどなく、兵士は万全な状態で前線に運ばれる。 米国では一番重要で高額な装備は軍人だと考えており、銃撃をうければ全滅するようなトラック荷台輸送は徹底的に排除され、銃撃や地雷や徹甲弾でも耐える装甲や熱中症等を防ぐための冷暖房完備の装甲兵員輸送車が採用される。米退役軍人はこう明かしてくれた。 「(2003年にはじまったイラク戦争で)自分のイラク派兵時は、クウェート国際空港からCamp Buehringまではチャーターバスでした。そこからの移動は陸軍のバスでイラク内の移動にはヘリか装甲車を使いました」 米軍は有事の派兵中でも比較的安全な後方移動はチャーターバスを頻繁に使う。有事の際は常に劣悪な環境に置かれるのだから、平時からあえて悪い環境に身を置く必要はない、という考え方が根底にはある。米国以外の中国やインドといった国でも、冷房付き装甲兵員輸送車を採用しているという。残念ながら、日本と先進国の軍人の扱いに対する認識の違いはかなり大きい。 日本に話を戻すと、自衛隊員のトラック荷台輸送については、問題視すらしない。古い戦争映画で兵士たちがトラック輸送されていたためだろうが、軍人はトラックの荷台輸送が当然と考える人が多い。自衛隊員に費やす金銭的負担を減らそうとすればするほど、最前線で国を守ろうとする自衛隊員の体には負担がかかる。それは本末転倒ではないだろうか。 取材・文・写真:小笠原理恵 国防ジャーナリスト。関西外国語大学卒業後、フリーライターとして自衛隊や安全保障問題を中心に活動。19年刊行の著書『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。公益財団法人アパ日本再興財団主催・第十五回「真の近現代史観」懸賞論文で最優秀藤誠志賞を受賞
FRIDAYデジタル